そのうえで、日本国民であればいつでも・誰でも・自由に閲覧できるようにすべきだ。海外に派遣された自衛隊員がどれほど劣悪な状況のなかで、真摯に平和維持活動に取り組んでいるか、日報を通じてありのままの実態を国民が知ることは悪いことではない。また、行政文書を衆人環視の下に置けば、プロセスが透明化され、確定後の捏造や改ざんはできなくなる。
そのためには、行政職員が日常的に利用する情報端末は、必要最低限のメモリーを備えたシンクライアントにしなければならない。既存のパソコンを使い続ければ、OSと日本語ワープロや表計算ソフト、プレゼン資料作成ツールなどに多額のライセンス・フィーが発生する。その費用の何割かをOSS(オープンソース・ソフトウェア:ソースコードが公開されており誰でも開発と利用拡大に参加できるコンピュータ・プログラム)コミュニティに寄付する代わりに、ライセンス・フリーのソフトを使用したり、開発してもらう。パソコン全台を入れ替える必要はなく、内蔵ハードディスクを外してネットワーク環境を再設定するだけでいい。
日常業務は部局や支局ごとに設置したサーバーで処理し、プロジェクトの進捗状況に応じて省庁単位のサーバーに収納する。決裁されたプロジェクトにかかる記録(デジタルファイル)は、国の最終サーバーに格納する。ファイルへのアクセスログを監視する仕組みも必要だし、部局・支局、省庁、国の各レイヤのサーバーはブロックチェーンで相互に監視する。データファイルに不正なアクセスや変更が行われたら、一斉に検出アラームが表示される。「階層型分散協調アーキテクチャ」と呼ばれる技術を援用すれば、さして難しい話ではない。
行政と国民のためのデータ倉庫をつくる
1990年代後半、「関東大震災並みの巨大な直下型地震がいつ来てもおかしくない」と喧伝された。そこで関東地方の市町村が、同じメーカーの同じコンピュータを使っている遠隔地の市町村と相互データ保管協定を結んだことがある。コンピュータで処理されるようになった住民や税務、土地に関するデータを相互に預け合って、万が一の災害が発生した場合、バックアップする。のちに米国同時多発テロで脚光を浴びたBCP(Business continuity planning:事業継続計画)の先駆けをなした考え方だ。