Twitterの分岐点?攻撃的ツイート制限に懸念も〜本音で自由or安全だが味気ない
イギリスで女性を標的にした脅迫など、悪質なツイートが相次いでいた問題で、8月3日に英Twitter社が謝罪声明を発表。利用規約を変更し“攻撃的なツイート”を禁止するとしたことを、各メディアが取り上げている。
4日付のウォール・ストリート・ジャーナルによると、事の発端は、英中央銀行のイングランド銀行が先月、10ポンド紙幣の意匠に女性作家の肖像を採用すると決定した際に、女性肖像の採用運動を展開していたフェミニスト活動家のキャロライン・クリアド=ペレズ氏に対する脅迫などがツイッター上で書き込まれたこと。5日付の産経ニュース記事によれば、活動家を擁護した女性下院議員にも同様のツイートが相次ぎ、警察が脅迫容疑で男2人を逮捕する事態に発展していた。
イギリスでは主に女性蔑視のツイートが氾濫し、収拾がつかない事態になっていたようだ。在英メディアアナリストの小林恭子氏が8月5日、自身のブログでまとめたところによると、被害は「一定の知名度を持つ女性への暴言ツイートは女性の新聞記者や雑誌記者にまで拡大」。例えば、古典学者でテレビ番組のプレゼンターでもあるメアリー・ビアード氏にも、容姿への批判や女性蔑視のツイートが多数寄せられ、3日には「爆弾をしかけたぞ」という直接的な脅迫を受けたことで、警察に通報したという。
このような状況で、Twitterのインターフェイスに「悪用を通報する」ボタンを採用するよう求めるオンライン署名は、2日時点で12万5000件集まったそうだ。英Twitter社のGM、トニー・ワン氏は利用規約の変更とともに、9月末までにこの「通報ボタン」をPC、スマートフォンなど全てのプラットフォームに新設すると発表している。
日本でTwitter関連の問題といえば、政治家の不用意な発言や、著名人のプライバシーを侵害する内容の投稿、また一般ユーザーの“犯罪自慢”まがいのツイートが炎上することが多い。「バカ発見器」と揶揄されることも少なくないが、注意して利用していれば、思わぬ被害に遭うことはめったにない、というのが一般的な認識だろう。
●表現の自由と快適なサービス提供のバランス
そんな中で日本のユーザーからは、発言の自由が急激に狭まるのではないか、という懸念の声も聞こえる。
「発端になった脅迫ツイートが許されないのは当然として、“targeted abuse”はどう運用されるのかなぁ。Twitter側はどんな基準で「攻撃的」と判断するのか、判断したらどうするのか…? 判断基準が曖昧だと通報が乱用されて混乱になりかねないから、そこは心してもらわんと…」(@brzm505)
など、「攻撃的」と訳された「abuse」の定義についての議論が行われている様子。また一方では、個人、企業や団体を問わず、都合の悪い情報を流すユーザーを排除するために「通報ボタン」が使われかねない、という見方もある。
「気に入らない奴の他者への攻撃的ツイートを見つけてTwitter運営に報告しまくるエクストリーム・スポーツ」(@tomate045)
ネット上での「表現の自由」という理念の維持が難しくなっていると指摘しているのは、8月6日付のウォール・ストリート・ジャーナル。例として、「米グーグルがイスラム教を侮辱するユーチューブ動画を削除するために何かをもっとすべきだったのか」、あるいは「フェイスブックが母乳を与えている女性の写真の一部を禁止しているのは行き過ぎなのか」といった論争が生じていることを挙げ、「全てのインターネット関連企業は、表現の自由の保護と快適なサービス提供という両者のバランスを取らなければならない」としている。
Twitterは、危うさを持ちながらも市民の本音が縦横に飛び交う場であり続けるのか、はたまた“検閲”が強化され、安全ながら味気ないメディアになっていくのか。その“バランス”が変わりつつある今が、まさに分岐点になるのかもしれない。
(文=blueprint)