“ドローン抑止力”という新たな役割
韓国では、軍需装置開発企業であるハンファシステムが、ドローン監視レーダーセンサーの開発を牽引している。たとえば、「無人飛行装置の違法飛行感知のためのドローン監視レーダープロジェクト」がそれにあたる。同社のイ・ヨンウク研究開発本部長は、国内のメディア取材に応えて次のように話している。
「アンチドローンシステムの開発における第一段階こそが、もっとも難解な技術を必要とする探知、識別過程の核心です。テロや事件の脅威を解決するため、探知レーダー開発を主管する韓国電子通信研究院(ETRI)では、2021年までに120億ウォンを事業費として投入する予定です」
一方、同社のチェ・ヨンジュン戦略本部新事業部長は、「軍用レーダーに比べ軽量で電力消費も少なく、場所の制限も受けずに2人1組で持ち運べる製品を開発中です」と語っている。現在、世界的水準とされる装置の小型ドローン最大探知可能距離が2.5km、レーダーパネルの重量約30kg程度だが、それを上回る利便性を誇るものだそうだ。
京畿道龍仁市にあるハンファシステムの研究所では、ドローン監視レーダーの電波特性を計測する研究が行われていた。キム・コヌ主席研究員は「現在プロトタイプのテストを行っています」とする。開発が終われば、幅52cm・高さ60cmのパネルふたつで、最大前方3km、可動角200度の空間を飛ぶものならば、リンゴ大の飛行体まで探知できるようになるという。さらに電子工学および赤外線センサーを装着した「コントウォームアイ」と連動すれば、昼夜天候を問わないというから驚きだ。チェ部長は、「国内ではドローン攻撃に対する危機感がまだ希薄だが、空港、原発、油類ストレージなど国家の中枢施設や、ロッテワールドタワーのような超高層ビルなども決して楽観視はできません。ドローン技術の発展に伴い、抑止力の役割も今後一層高まっていくでしょう」と指摘する。
新たな規制緩和・法規制も重要に
同じく韓国国内では、ドローンを無力化、捕獲する技術の開発も進んでいる。妨害電波や高出力レーザーを照射しGPS機能を麻痺させるジャミング技術がそれである。同国企業であるadeが開発した「マエストロ」は、標的に向かってトリガーを引くだけで、飛行中の機体を垂直下降させることができるという。龍仁大学校警察行政学科のイ・サンウォン教授は、「ドローンを制御する固有周波数を探知、奪取して強制的に着陸させるスプーフィング(なりすまし)方式もあります」と付け加える。ドローンの通信プロトコルをハッキングし、対象のドローンを自由に操るというものだ。
イ教授は「これからは拳銃のように、警察官が携帯できる製品も出てくるでしょう」と自信をのぞかせる。ほかにも、ドローンに物理的な衝突を試みるようなアイデアや仕組みもあるという。ユーコンシステムが開発した「ドローンキラー」は、最大時速180kmで標的を撃墜するとされている。
こうして、世界的に技術の発展が進むアンチドローンだが、規制緩和や法規制がどのように進むかも、併せて注目していきたいポイントだ。
(文=河 鐘基/ロボティア編集部)