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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

インダストリー4.0がいかに「空想」かがわかる話…巨額損失被る企業も出現

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士
インダストリー4.0がいかに「空想」かがわかる話…巨額損失被る企業も出現の画像1「Gettyimages」より

 インダストリー4.0は本当に「革命」となるのでしょうか。あるいは「単なる空想」なのでしょうか。本連載3回目の今回は、物流における「空想」について見ていきたいと思います。

 インダストリー4.0(以下、「4.0」と呼ぶ)の世界では、世界の工場がセンサーとインターネットでつながることで「まるでひとつの工場のようになる」といわれています。これに3Dプリンタの技術が合わさることで、自分だけのカスタム製品が簡単に手に入るようなことも想定されています。

 これまでの2回の連載で見てきましたが、この4.0には希望的観測が多く入っています。この「まるでひとつの工場のようになり、自分だけのカスタム製品が簡単に手に入る」というのも、実はこの類の話と変わりありません。というのも、「物流」と「情報流」を同じように考えているからです。

 今では当たり前になったインターネットの世界では、アメリカのサイトにある映像データを日本の家庭で瞬時にダウンロードすることができます。まさにネットワーク技術のイノベーションにより実現した「革命」です。では、モノづくりの物流において、これと同じようなことは可能なのでしょうか。

 例えば、あなた向けのフルカスタムのジョギングシューズをつくることを想定してみましょう。サイズ、ワイズ(幅)、靴底(クッション)、色をカスタムするとします。世界中の工場がつながっていることを想定するので、それぞれの部品は違う国でつくっているとします。靴底はマレーシア、インソールは中国、上部の足を覆う部分(アッパー)はアメリカでつくっているとして、最終組み立てを日本で行うとします。

 インターネットのオーダリングシステムに靴のサイズ、ワイズを入力すると、それに応じてマレーシアの部品工場がそのサイズの靴底をつくります。併せて、中国のインソール工場、アメリカのアッパー工場も製作をスタートします。靴底、インソール、アッパーは、最新の設備を用いれば、シート状のものからレーザーでカットできるので、いろんなサイズのものが混在してもモノづくりはできるでしょう。

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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