次に、それぞれカッティングした部品を組み立てるために日本へ運びます。ここで問題が生じます。マレーシアから日本へモノを運ぶには、空輸だと5kgぐらいのものを運ぶのに2万円ぐらいの費用と数日の日数を要します。アメリカからだと3万円、中国でも2万円程度かかります。
空輸における重量とサイズの制約、多品種少量生産を素早く実現するという観点から、それぞれ1ケースに20個の部品をいれるとします。そうすると、3カ所からの部品に対して3500円の輸送費がかかることになります(簡易に計算するため関税等は除外します)。材料費と工賃はすべて合わせて原価1000円ぐらいとすると、輸送費と合わせてこの時点で4500円となります。日本の組立工場での組み立て費、梱包などの資材費を1000円とすると総額5500円の原価となります。
一般的にネット通販等で売っているものの原価は、売価の25%ぐらいのものが多いので、5500円の原価を25%で割ると、売価は2万2000円となります。つまり、あなた用のカスタムジョギングシューズは2万2000円でないと購入できないのです。輸送費を除く原価は2000円なので、あなた専用でなければ8000円で買えるジョギングシューズが、世界の工場から部品を輸送することで余計に1万4000円払うことになるのです。
モノはインターネットの情報と違い、瞬時に流れることはあり得ません。なんらかの物理的な運搬手段で運ばなければならないのです。そして、そこにはコストと時間が発生します。フルカスタム対応のために数十個を空輸するとなると、膨大なコストが発生するのです。コンテナに詰め込んで、一度に何万個を船便で数カ月かけて運ぶならコストは上がりませんが、それだと4.0のいう「世界がまるでひとつの工場のように」ではなく、従来のモノづくりとなんら変わりません。4.0の世界観を実現するためには、完成品をものすごく高く買うか、それがビジネスとして成り立たないなら、モノをワープさせるしか方法がなくなります。
材質に適した「つくり方」
もうひとつ、考えなければならないことがあります。それは、モノづくりにはそれぞれの形状、材質に適した「つくり方」があるのです。4.0では、3Dプリンタを使い、自由に部品をつくることも想定していますが、なんでもかんでも3Dプリンタでつくれるわけではありません。仮につくったとすると、とんでもないコストになります。