ドコモが4月に発表したのは「大半の利用者が2~4割の値下げになる」というプラン。今回のauの新料金プランについて、KDDIの髙橋誠社長は「最大4割の値下げとなり、さらにお客さま還元を強化した」と会見で発言している。それではなぜ政府は、携帯電話の料金に言及したのだろうか。
「政府が発言して料金が4割下がるとしたらPR効果があるんで、政治的な意図があると感じますね。消費税は上がるけど、携帯の料金は下がりますということを政府として演出しているのかなと思います。政府がいろいろ口を出してくるタイミングは、なんらかのかたちで窮地に陥った時だったりします。今回の場合は消費増税に合わせてというところでしょう」
だが実際に4割下がる料金で利用するには、かなり特殊な条件をクリアしないとならないというわけである。
「ドコモの料金プランはシンプルになっていますけど、auの料金プランは注釈の部分が多くて複雑です。あともう1点、2年縛りの自動更新の問題があります。契約して2年の間に解約すると手数料が発生するというのが2年縛りですけど、その2年が終わっても次の2年に自動更新されるということを大手携帯会社は行っています。更新月に解約すれば手数料はかかりませんけど、それを逃すとほとんど半永久的に2年縛りが続いてしまいます。これについては昨年の4月、総務省の有識者会議が是正を求めています。しかしドコモとauの新料金プランでは2年縛り・自動更新というしくみは残っているのです」
これについては筆者の経験として、5年以上も使っていた端末を、サービスへの不信感から解約しようとした時に、手数料がかかると言われて驚いたことがある。たとえば、端末が無料になるようなサービスをするから、2年は使ってくださいという縛りは理解できる。2年縛りの自動更新というのは意味がわからない。
「これも以前はなかったんです。最初の1~2年縛りというもので、それ以降は解約手数料がなくなっていくという良心的なものでした。それが安くするための競争がずっと続いて、2年縛り自動更新というスタイルになってしまったんです」
auは「問題ない」との回答
auの新料金プランの表示の仕方について問うたところ、KDDI広報部から次のような回答が返ってきた。
「新プランの魅力を最大限にお伝えするために、各種割引適用後の料金を記載させていただいております。当社のお客様のご加入状況を見ても、適用されるお客様が少ない条件とはなっていないです。また最安値が適用されない場合の詳細な条件などについても、ニュースリリースに記載し正確な情報をお伝えしています。さらに店頭においてもお客様に対しては条件等の説明を行います。なお条件付きの最安値表示自体は禁止されているものではなく、最安値が適用される条件、別途必要な料金等についても記載しており問題ないと考えています」
違法なものではないかもしれない。だが街で買い物をする時に、値札を見て買おうとしたら、会計の時に条件が揃っていなければその値段にならないと言われたら、大多数の消費者は不愉快に思うだろう。そうした商売上のマナーの点でどうなのか。担当者は以下のように答えた。
「そのようなご指摘もあるかと思いますので、当然お客様が分かりやすいようにというところは弊社のほうも当然として思っていますので、そういったことを踏まえて検討させていただければなというふうに思います」
条件そのものも、同居家族3人というのはかなり厳しいもののように思えるが、その点についてはどうなのか。
「同居家族の人数などそのようなご指摘はあるとは思っていて、弊社も調べて多くのお客様が享受できるようにというところは考えているので、具体的な数字は言えないものの、だいたい家族の人数は3人というのは国の調べでも出ておりまして、確かに単身赴任とかで住所変更されてしまうとか、お客様のすべてが割引を受けられないのは事実かとは思いますが、大部分のお客さまに関しては受けられるのではないかなと思っています」
このやり取りがあったのが、5月16日。翌17日に担当者から、サイトでの表示を変えたと連絡があった。詳細ページに飛ばなくとも、auデータMAXプラン「2年契約適用時の料金は8,980円/月です。(その他割引適用前の料金になります)」と、かなり小さい文字ではあるが記載が入った。他の新プランについても同様の改善がなされた。
(文=深笛義也/ライター)