注目されたアプリで、ユーザー数を順調に伸ばしていたにもかかわらず、話題の機能を停止させたのはなぜなのか。
●ショールーミングを懸念されたバーコードスキャン
WEARのバーコードスキャン機能は、店頭で衣類に付けられたタグのバーコードをスマホで読み取って商品情報を記録できるというもの。記録した情報は「この服、素敵だと思わない?」などとSNSを通じて友人にシェアすることができる。
しかし発表時から注目されたのは、別の側面だった。スマホに保存された情報からブランドのオフィシャルECサイトや「ZOZOTOWN」にアクセスし、同じ商品を購入できるという機能が小売店の反感を買っていたのだ。つまり、店頭で実物の色や質感を確認したり試着をした後、安価なネットショップで購入する「ショールーミング」という、近年幅広く小売業界で大いに嫌われている行為を加速させるアプリだと捉えられていたのだ。
ただし、すべての店で、すべての商品に関して、バーコードをスキャンするだけでショールーミングが可能となるわけではない。サービス開始時点でWEARに参加したのはユナイテッドアローズやアーバンリサーチなど200ブランド。一方、ショップ側の反応は鈍く、パルコの4店舗のみが実験的に参加というスタンスだった。
店頭では「新しいお買い物体験・実験中」と大きく掲げて消費者に訴えたが、実際のところバーコードスキャン機能はあまり利用されていなかったようだ。限られた店舗、限られたブランドでしか利用できない上に、対応店舗・対応ブランドでも利用できない商品があり、ほとんど意味のない機能になってしまっていた。
●強固なネガティブイメージ
参加店舗やブランドが少なく、普及しなかった要因としては、やはり店舗側の抵抗感が強かったのだろう。
ショールーミングが広まれば、来店客はあるが売り上げは伸びないという状況になる。客が入店した時点では購入するかどうか把握できないため、スタッフは対応しないわけにもいかず、試着等で荒らされた商品を整える手間もかかる。小売店としては、おもしろくないばかりだ。
また店頭で撮影する行為そのものも、盗撮に見えるとして嫌われる傾向にある。バーコードか、商品か、近くにいる人か、何を撮っているのかはわかりにくい。店頭でシャッター音が響けば、店員や他の買い物客は不安を煽られる部分もあるだろう。
使いづらさとネガティブなイメージが強かったことで利用者は伸びず、バーコードスキャン機能は中止となった。もともと実験的な導入であるので、公式なスタンスとしては実験終了ということになる。スムーズに受け入れられる土壌は、まだ整っていなかったといえるだろう。