つまり、まだ7億、場合によってはそれ以上のユーザーがソーシャル化から取り残されているというわけだ。そこでAさんは、次を見越したコンテンツやアプリのリサーチと開発をすでに進めている。そのなかのいくつかは、すぐにでもスタートできる段階にまで煮詰めてあるという。
「よくウェイポー(騰訊微博)で中国に民主化が起こるなどと日本や欧米で言うけど、新浪微博とて中国政府と無関係ではいられません。実際、胡錦濤との太いパイプがある、と中国では言われている。ガス抜きとしての書き込みはあっても、本当の意味での反政府運動など、いまの体制下ではできるはずがないということです。新浪微博が収益化を急がないと言っているのも、政府の顔色をうかがってのものだと思いますよ」
政敵を追い落とすための世論誘導にすら、使われる可能性があるとAさん。そもそも、中国のネットは軍の情報部が所管しているという話があるぐらいだから、さもありなんではある。
「それよりも、次のビジネスを見据えるならば、ゲーミフィケーションを援用したエンターテインメント、娯楽を入り口に、どのようにユーザーを確保するか、海外企業をどのように呼び込んで互いのビジネスにするか、でしょう」
中国なりのローカライズと、海外企業なりの方法論、商習慣とをどのようにマージ(融合)するか。さらには、課金の方法をどうするか、Aさんの興味はそちらにあるようだ。
ソーシャル化が、イコール「お金になるネットユーザーの情報取得と囲い込み」だとすれば、”ライバルがモタモタしているうちに、サッサと収益モデルを完成させてしまえ”ということなのだろう。Aさんによれば、これまで中国のIT、ネット系企業で成功したものは、単純に日本や欧米での成功モデルをうまくアレンジして持ち込んだケースがほとんどだという。日本や欧米よりも、はるかに速いタイム感でネット化が進む中国では、2〜3年で次の展開へと舵を切る身のこなしが要求される。しかも、今後は手本とするものがなくなるため、中国発でオリジナルのモデルを構築していく必要もある。
「ネットだけ、システム開発だけ、不動産だけというのでは、これからは中国でも通用しなくなるでしょうね。中国、日本、アメリカでいろいろなビジネスをしてきた私は、有利な立場にいるのかもしれませんね」
(文=井上トシユキ/ジャーナリスト)