IQOS(アイコス)など、いわゆる加熱式タバコに対する規制が強化されることになりそうだ。加熱式タバコは紙巻タバコなどに比べて有害性が少ないと思われているが、7月26日、WHO(世界保健機関)は「喫煙に関する世界各国の規制状況について」の報告書を公表し、「加熱式タバコは、従来のタバコと同じ有害物質が含まれることには変わりなく、必ずしも健康上のリスクを軽減させることにはつながらない」と指摘、従来のタバコと同様の規制を設けるべきだと提言した。
同報告書では、公共の場での喫煙禁止、受動喫煙対策、タバコ税の導入など、なんらかの喫煙規制を導入している国は2年間で15カ国増え、136カ国となったと評価した。加熱式タバコについては、「従来のタバコと同じ有害物質が含まれていることに変わりはなく、受動喫煙の有害性も否定できない」とした。その上で、加熱式タバコの規制が国ごとに異なる点を挙げ、従来のタバコと同様に規制すべきと指摘した。
WHOはすでに2003年5月に「タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約(タバコ規制枠組条約) 」を採択している。タバコ規制枠組条約は、喫煙が健康・社会・環境及び経済に及ぼす悪影響から、現在及び将来の世代を守ることを目的としており、日本も条約を締結しており、2005年2月27日から条約が発効している。主な条約内容は以下のとおり。
(1)受動喫煙の防止
(2)タバコ製品の主要な表示面の30%以上を健康警告文に充てる
(3)タバコの広告、販売促進および後援(スポンサーシップ)を禁止または制限する
(4)未成年者に対するタバコの販売を禁止するため効果的な措置を取る
日本でも、タバコに対する規制の強化により、喫煙者は大幅に減少。厚生労働省の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、現在習慣的に喫煙している人の割合は、2017年度時点で 17.7%(男性が 29.4%、女性が 7.2%)となっており、低下傾向が継続している。
半面、欧米では専用の液体カートリッジを加熱し、発生する蒸気を吸引する「電子タバコ」が若者を中心に広がりを見せている。電子タバコは、煙を吸わないため、タールといった発がん性物質が体内に蓄積しないと思われており、ネット通販などで電子タバコとカートリッジをパッケージ購入できることもあり、若者層へ浸透しているようだ。
タバコ税の引き上げも議論の俎上に
だが、2016年に米CDC(疾病管理予防センター)は電子タバコについて、喫煙者が蒸気を吸い込むことにより、ニコチンをはじめ依存物質や香りが体内に取り込まれ、健康面でも悪影響が懸念されると注意喚起を行い、国や州政府に対して対策を行うように提言している。
このように、加熱式タバコ、電子タバコといった新しい喫煙手段が、特に若者層を中心に拡大することに歯止めをかけるため、WHOなどが規制強化を呼びかけているのだ。では、規制強化として、どのような対策があるのか。タバコの広告規制などはすでに実施されており、今後はネット通販などで加熱式タバコや電子タバコを若者層が入手できないような規制の強化や、喫煙教育の強化などが考えられる。
さらには、タバコ税の引き上げによる購入意欲の減退も検討の俎上にのぼるだろう。ある自民党関係者は、「加熱式タバコや電子タバコの喫煙抑制には、タバコ税の引き上げがもっとも効果があるだろう。税収効果も高く、反対も少ない」と意欲を見せている。
喫煙者、タバコメーカーにとっては、一段と厳しい“極寒の時代”が到来しそうだ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)