中国、世界の480の大学にスパイ拠点を設置していた…中国語教育機関「孔子学院」装う
米国、二重スパイに勧誘
一方、宋氏が自ら暴露しているように、ブリュッセルの米国大使館に駐在しているCIA要員が宋氏に接触し、二重スパイになるよう求めたのも、CIAが宋氏を中国のスパイマスターであることを把握したことからこそ、宋氏を「使い道が多い人物」として見込んだからに違いない。
サウス紙によると、宋氏がCIA要員と初めて会ったのは自由大学内の孔子学院のイベントで、その後も何回か会って親しくなったころ、彼のほうから「私はあなたが中国の情報機関に密接に協力していることを知っています。我々(米情報機関)にも協力していただけませんか。もし、あなたが断るというのであれば、深刻な結果を被ることになるでしょう」との脅しともとれる依頼を受けたという。
サウス紙は宋氏が明かしたCIA要員である米国大使館員の名前をもとに、大使館に問い合わせたが、「そのような人物はいない」という回答で、宋氏についても「まったく知らない」と全面否定だったという。
ブリュッセル自由大学教授で、EUの政策執行機関である欧州委員会の特別顧問を務めるジョナサン・ホルスラッグ氏はこう指摘している。
「宋氏がベルギーに入国拒否になったのは驚くべきことではない。宋氏は素晴らしい人物であり、礼儀正しい紳士だが、孔子学院は中国のプロパガンダであるのは明らかであり、教育機関であるはずがない。私が憂うるのは、EUで活躍するであろう優秀な学生や若者が孔子学院のプロパガンダ活動によって、中国に無批判で、好意的な見方をするようになることだ」
一方、中国外務省は10月31日の会見で、宋氏をめぐる報道について、「事実無根で下心のある話だ」と否定し、「孔子学院は世界が中国を理解する一つの窓口だ」と強調し、孔子学院が中国の情報機関の拠点になっているなどとの主張を強く批判している。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)