不正な会計処理の問題などによって、東芝が7800人の大規模リストラに踏み切ることが発表された。その費用によって、来年3月期の1年間のグループ全体の最終損失は5500億円と過去最大の赤字になる見通しだという。ほんの数年前まで「就職したい企業ランキング」で上位にランクインしていた大企業とは、とても思えないほどの凋落ぶりだ。
そんな東芝と同じく、大規模リストラを余儀なくされている韓国の財閥企業がある。“30大財閥グループ”に入り、創業100年を超える斗山グループの系列会社、斗山インフラコアだ。
斗山インフラコアは最近、入社3年目以上の社員はもちろん、入社1~2年目の新人にまで事実上の“希望退職”を促した。斗山グループほどの大手企業で、新入社員まで希望退職の対象とするようなリストラは、1997年のIMF通貨危機の時でさえ起こっていない。この事態を受けて同社に対して非難が集中すると、斗山グループのパク・ヨンマン会長は「新入社員は守り切れ」などと語り、まるで自分は新入社員へのリストラを知らなかったように振る舞った。
そんな会長の厚顔さが火に油を注ぐ結果になった。そもそも斗山インフラコアが経営危機に陥った背景には、パク会長が陣頭指揮をとった無謀なM&A(買収・合併)があったからだ。
斗山インフラコアは去る2007年、米インガソール・ランドのボブキャット(建設装備事業部門)などを5兆ウォン(約5000億円)で買収。しかし、翌年にグローバル金融危機が起こったことで売り上げは伸びず、さらに買収に充てた資金は借金によるものだったため、ただ利子がかさむだけの重荷となってしまった。利子費用だけで累計2217億ウォン(約222億円)に上っているという。
現在、同社の時価総額は1兆2000億ウォン(約1200億円)まで下落。純資産2兆4000億ウォンあるにもかかわらず、時価総額はその半分しかないということは、いかに斗山インフラコアに将来性がないかを証明しているようなものだろう。新入社員まで含め、社員の40%をリストラするような企業に再建は不可能だという評価だ。無謀な買収で経営危機に陥り、その失敗を社員たちに押し付けるようにリストラを敢行していることから、「人がミレ(未来)」という斗山のスローガンは、今では「人がモレ(どうしたって?)」というパロディになってしまった。
無謀な買収が経営危機の背景にあるという点は、東芝との共通点といえるだろう。東芝は06年、米原子力大手ウェスチングハウスを約4900億円で買収。しかし、グローバル金融危機に続いて11年に福島第一原子力発電所の事故が発生したことで、原子力事業の買収は東芝の重荷になったという分析が多い。斗山と東芝が買収に使った金額が似通っているのも、なんとも皮肉だ。
いずれにせよ、過去の業績からは考えられない凋落を見せている東芝と斗山。両者ともにこのまま失墜していくのか、それとも生き残ることはできるのか。日韓で見比べてみるのも一興かもしれない。
(文=ピッチコミュニケーションズ)