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日本サッカーは海外サッカーとどこが違うのか 元プレミアリーグ指導者が見た差異

構成=栗田シメイ/Sportswriters Cafe

指導者も幅広く海外に出るべき

–現在、海外のトップクラブでプレーする日本人選手は増えましたが、指導者はほとんど見かけません。その点について、どう思いますか?

高野 私の場合、運にも恵まれていたのは事実です。あまり知られていませんが、スペインのFCバルセロナや、プレミアリーグのリヴァプールFCといった名門チームのユースで活躍している日本人指導者もいます。日本サッカーはすごいスピードで進歩していますが、海外は試行錯誤しながら、より最新のメソッドを取り入れています。文化、考え方が違えば、サッカーの捉え方も異なります。イングランドには多くの経験があり、それに基づいて指導が行われます。そんな感覚的な部分は、実際に海外に出てみないとわからないですし、チャンスがあれば国を問わずにどんどん出ていくべきだと思います。出て行って、日本文化やサッカーのスタンダードや常識が、ほかの国と比べてどう違うかを肌で感じること――。そんな経験が、日本をより深く理解し考察を重ねる上で非常に大切だと思います。

–海外で指導者として活躍するために必要なことはなんだと思いますか?

高野 前提として、その国の文化をリスペクトすること。その中で、いかに自分の色を出せるか。とにかく、思い立ったら行動に移せる積極性は必須です。当然ですが、語学力が占めるウェイトも大きいです。あとはディベート能力や人に伝える際の表現力も必要です。いかに根拠を探り、自分の意見を立証していくか。表現に関しては、少し大袈裟なくらいでちょうどいいかもしれません。

–Jリーグとプレミアリーグの現場で感じた最も大きな違いを教えてください。

高野 すべてに対してのお金のかけ方です。たとえば、対戦相手や自チームの分析に関してもかなり力を入れています。分析はJリーグでも近年浸透しつつありますが、プレミアリーグはレベルが違います。基本的にJリーグでは、分析スタッフはトップチームで1~2人程度。プレミアの場合、常時7~8人の分析スタッフが活動し、走行距離やパフォーマンスをデータベース化し、チームスタッフ全員で共有します。試合はもちろんのこと、練習でも分析は怠りません。

–最後に、海外で活躍する指導者の数は、今後どう推移しそうですか?

高野 間違いなく増えていくと思います。というのも、私の場合サンフレッチェ時代に指導者としての基礎を培われました。サンフレッチェ現監督の森保一氏、U-16日本代表監督の森山佳郎氏をはじめとする指導者やスタッフの下で学んだ技術、戦術などサッカーの基本知識は、サウサンプトンFCでも見劣りしませんでした。

 かつて、マンチェスター・ユナイテッドFCのアレックス・ファーガソン元監督が、日本代表の香川真司選手のことを「サッカーIQが高い」と表現していましたが、それはトップレベルの日本の指導者にも同様のことがいえると思います。分析力、協調性、論理性。このあたりは日本が世界に誇れるポイントです。あとは、海外に出て直感や感性を養うこと。私個人の意見ですが、そのサイクルを繰り返していけば10年後、20年後には海外のトップリーグで指揮する日本人監督も出てくるのではないでしょうか。少なくとも、コーチの絶対数は必ず増えてくると思います。

–ありがとうございました。
(構成=栗田シメイ/Sportswriters Cafe)

高野剛
※1973年10月4日生まれ。福岡県出身。アメリカで8年間コーチ、指導者として活躍し、2005年からサンフレッチェ広島の育成部門のコーチに。ジュニア、ジュニアユース、トップのコーチを務める。その後、イングランドに渡り3部のハダースフィールド・タウンFC、2012年にイングランドのサウサンプトン、アビスパ福岡のコーチなどを経て、今季からタイリーグのBB-CU FC監督に就任。

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