地域活性化センターの調査によると、出店状況は08年の36店から55店へと1.5倍に増加。最近は大型店舗が増え、売り場面積500平米以上の店が7店となった。年間入館者数でみると、14年度中に100万人以上の入館者があったのは、「北海道どさんこプラザ」(北海道)、「とちまるショップ」(栃木県)、「表参道・新潟館ネスパス」(新潟県)、「銀座わしたショップ」(沖縄県)の4店。50万人以上となると全部で10店となっている。
年間売り上げはどうか。全体の53%にあたる29店舗は1億円以上を売り上げた(12店が未回答)。これは調査を開始した09年度以降、過去最高である。売り上げ上位は、常連の老舗「北海道どさんこプラザ」「銀座わしたショップ」(いずれも1990年代開業)に加え、2012年開業の「広島ブランドショップTAU」(広島県)が健闘。銀座・有楽町にある北海道、沖縄、広島の3店舗は、なんと年間7億円以上の売り上げを記録した。
最近の出店傾向について、地域活性化センターは「銀座・有楽町、日本橋への出店が続いており、ますます集積が進んでいる」と分析している。
特産品販売から「地方創生」「移住」へシフトする動きも
銀座、有楽町、日本橋という東京を代表するショッピングゾーンに店舗を展開する以上、そのコスト負担は相当なものだ。
「過去に出店したアンテナショップの銀座の店舗の例でいうと、1坪当たりの賃料は2万5000円前後。約50坪の店で賃料が月額130万円、管理費が15万円ほどでした。年間の賃料、管理費が約1700万円かかる計算です。これに契約時には敷金、礼金として10カ月分の1300万円がかかったといいます。最近は賃料が高騰しており、こんな金額では収まりません。ましてや1階ともなるとグンと賃料が跳ね上がります。そこに人件費、光熱費などさまざまな運営コストがかかってくるので、物品販売だけで黒字化するのは厳しいのではないでしょうか」(経済ジャーナリスト)
それでもなお、地方自治体が銀座や日本橋を目指すのはなぜか。開設の目的に、「自治体のPR」「特産品のPR」「特産品の販路拡大」「観光案内・誘客」「地域情報発信」などを挙げたショップが40以上あった。一方、実際の効果については、40以上のショップが「観光」以外のメリットがあったとした。「観光客の増加」を挙げたのは29にとどまった。
注目されるのは、アンテナショップの役割の変化だ。地方創生関連事業として「プレミアム商品券」の取り扱い(販売)や「ふるさと割」(割引セール)を実施するショップが増加した。外国語のパンフレットを置くなど訪日外国人客への対応を強化する動きもある。さらに移住相談の窓口の設置やイベントの開催に取り組むショップも増えている。特産品販売の場から「地方創生」「移住」「起業」へとシフトする動きが目立っている。先に紹介した「銀座NAGANO」は4階のフロアに移住相談コーナーを設置したほか、起業やビジネスマッチングのためのスペースも設けている。
「自治体の最新情報、詳細情報を都会の人々に発信し、その自治体に対する認識を深めて実際に訪れてもらう。さらには移住、起業、ビジネス交流を促進する。そんなふれあい、交流、情報提供の場としてアンテナショップを位置づけ、ネット展開などと絡めて複合的に運営していけば、売り上げ以外の効果が見込めるのではないか。都会の生活者が欲しいのは特産品ではなく、自治体、観光地の本当の情報です。そのニーズにどれだけ応えていけるかがポイントになるでしょう」(同)
変貌するアンテナショップの真価が問われる1年になりそうだ。
(文=編集部)