ビジネスジャーナル > 社会ニュース > ツタヤ図書館、天下り?新館長を直撃
NEW

ツタヤ図書館、市から「天下り入社」疑惑の新館長を直撃!「市長から声かけられた」

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

 2月6日付当サイト記事『ツタヤ図書館、市側の元図書館協議会会長がCCC天下り疑惑…新館長に就任』において、宮城県多賀城市で、市立図書館の管理者を選定する市の協議会会長だった人物が、指定管理者として選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に天下りしているとの疑惑を指摘した。

 経緯を簡単に振り返ってみる。

 まず、2013年5月に多賀城市が市立図書館の管理・運営を民間業者に委託することを決定した。その管理者選定に深く関与する図書館長の諮問機関の図書館協議会において、今回天下り疑惑のある照井咲子氏が会長に就任。14年5月に退任したが、その2週間後にCCCが指定管理者に決定。さらに10カ月後、照井氏はCCCに入社し、新図書館準備室室長に就任したのだ。

 加えて、照井氏は今年3月21日にリニューアルオープンする新図書館の館長に就任することが決まっている。

 管理者を指定する側の教育委員会に所属し、かつ図書館協議会会長だった人物が、指定管理者となった民間業者に再就職している状況は、天下りといわれても仕方のないところではないだろうか。

 だがCCCの広報は、複数の候補者の中から最適な人物を絞り込んだところ照井氏に就任を要請することになった。照井氏がその時期に特別な権限を持っていた人物であったのは事実だが、それはたまたまであるとして天下りを否定している。

 また市教委は、退職した人物がその後どこに再就職してもそれは関知するところではないとして、関与そのものを否定している。

 しかし第三者からみれば、委託者である市教委の関係者が図書館運営業務を受託した民間業者に再就職することは、市民本位の行政を危うくしかねない重大問題だ。

 CCCが運営する佐賀県武雄市と神奈川県海老名市の「ツタヤ図書館」では不祥事が多発しているが、そのたびに市当局が「問題ない」とCCCを擁護する姿勢に批判が集中している。一般市民の目から見て不適切と思われる行為に対して行政側が厳しく指導監督しなければ、行政と業者の関係に疑問を抱かれるのは当然といえる。

 多賀城市の場合、菊地健次郎市長が強引にツタヤ図書館の誘致を進めてきたため、正式に随意契約を交わす前から「CCCありき」で事が進んだとの指摘がある。

 そのためなのか、東日本大震災の被災地であるにもかかわらず、武雄市や海老名市と同じ高さ4メートルを超える背面高層書架がある。さすがに落下防止対策は取られているはずだが、大震災を経験した市民にしてみれば言い知れない恐怖を感じるのではないか。

 また、武雄市の図書館で中古本を大量に仕入れて問題になった件に関しても、多賀城市教委は「10年以内の本であれば許容する」という基準を設け、堂々と容認している。一般的な図書館では、地元の書店協会を通じて新刊図書を仕入れるが、なぜ多賀城市ではそのような措置を取るのか。

 そもそも、新図書館の館長を公募せずに密室で選任されたのはなぜなのか。多賀城市では、指定管理者を公募もせずにCCCと随意契約しており、不透明さが拭えない。

渦中の新館長に直撃!

 そこで今回、新図書館準備室を直撃して、照井氏本人に直接話を聞いた。

–図書館の館長に就任されることが決まっておりますが、そもそもCCCに天下りされることに対して批判はありませんでしたか。

照井咲子氏(以下、照井) 誰がそんなことおっしゃったんですか?

–図書館協議会は館長の諮問機関であり、図書館の方向性を議論して決めて行く権限を持っていたわけですよね。常識的に考えて、その会長が指定管理者となったCCCに再就職するということは、スキャンダラスな話だと思います。

照井 なるほど。今初めて、天下りという言葉を伺いました。私には、そういう意識はまったくなく、多賀城小学校を退職して2年目に市長さんから、図書館について十分理解しているということで「手を貸してほしい」と声をかけていただきました。

–2014年5月まで、図書館協議会の会長だったのは間違いありませんね。

照井 そうです。“あて職”ですから、私が多賀城小学校の校長でなければ、その協議会の仕事をすることはなかったです。現在、私の後任の校長も図書館協議会の会長をしております。

–会長を退職された後はどのようなお仕事をされていましたか。

照井 別の市町村の教育委員会で仕事をしておりました。

–退職する時点で、指定管理者はCCCに決定していましたか。

照井 いいえ、まだ決定ではありません。よくわかりませんが、協議をしていたことは間違いありません。そしてその座長を務めていました。

–現職の準備室長に就かれたのはいつですか?

照井 15年10月1日に契約社員となりました。その前はアルバイトみたいなかたちで働いていました。

–15年の4月からCCCの中で働いていたのですか。

照井 はい、そうです。

–14年5月に図書館協議会会長を退職した後、1年間空いてはいますが天下りされた格好になっているわけですね。

照井 天下りの意味を説明してください。

–要するに、図書館の管理者を決める権限のある協議会の会長が、選定された民間業者に再就職して図書館長となった。それは世間的には、間違いなく天下りです。

照井 そうですか。私は、多賀城市の市民の皆さんや、多賀城市の子供たちのために、今まで一割程度の利用者しかなかった図書館が多くの方々に利活用されるように新しい図書館をつくっていこうと考えて引き受けました。

市長が就任要請

–それは市長から就任要請があったのですか。

照井 教育委員会の下に生涯学習課があって、その教育長さんを通して、市長さんからというかたちで声をかけていただきました。もちろんそういった立場にあったことも踏まえたうえで、自分の第2、第3の職場としてやり甲斐のある仕事だと考えて受けました。天下りだなんて、少しも考えませんでした。

–「李下に冠を正さず」という考えはなかったですか。

照井 今まで、まったく天下りなどと微塵も考えていませんでしたし、私は非常にボランティアリズムというか、そういった気持ちで多賀城市のために仕事をしようと思っています。

–無給なのですか。

照井 無給ではありません。

–ではボランティアではありませんよね。

照井 はい。

–では、図書館について、どんなに安全対策を講じていたとしても、被災地で4メートルを超える高層書架というのは、市民感情を鑑みると不適切だと思うのですが、そのような指摘はありませんでしたか。

照井 私にそれを聞かれても、そもそも決定権はありませんでした。

–会長だったのに決定権はなかったのですか。

照井 その時には、建築物については何も決定していませんでした。ただ、武雄市の図書館に似たものをつくるという話だけでした。

–図書館協議会会長として決定権はなかったとしても、現在は準備室長で、3月21日のリニューアルオープン後は新館長になるわけですよね。新図書館について、事前に打ち合わせをして話を進めているのではないのですか。

照井 いいえ、そのへんのマネジメント関係については別の担当者がおります。

–照井さんはお飾りですか。

照井 とても失礼なことを先程来、繰り返されますね。

–申し訳ありません。しかし、決定権もなく何も知らないのであれば、肩書だけということですよね。

照井 知らなくはないですよ。ただ、私は多賀城市の条例や条例改正に関して意見を述べる立場ではありません。

–会長でも意見を述べられなかったのですか。

照井 会長だったのは2年前までです。

–しかし、その頃も図書館の移転計画などが作成されていたのではないですか。

照井 確かに、会長をしていた後半から、そういう話題がありましたが、在任中に図書館協議会の中で決定したわけではありません。その後、1年半が経過してCCCの契約社員となりましたが、私がかかわらなかった間にさまざまなことが決定されていました。

責任はすべて現館長

–つまり、現館長がすべて責任を持っており、打ち合わせもしてきているということですね。

照井 その通りです。

–しかし、新館長になることに責任はありますよね。

照井 意見は求められていませんよ。

–新館長になるのに、意見は一切求められないのですか。

照井 求められませんでした。図書館協議会は、その間も実施されていますが、私は協議会の会員でも評議員でもありませんから。

–中古本を蔵書として購入することに関しても、準備室長にまったく話はないのですか。

照井 私が相談された経緯はありません。ですから、教育委員会に確認してください。

–つまり、照井さんは祭り上げられただけだということですね。

照井 それは間違っています。

–新図書館の準備室長で、3月から初代館長になるにもかかわらず、経緯を一切知らず、意見も言えず、決定権もない、話し合いもしていない。

照井 記録はすべて読ませていただきましたし、協議会で話し合われた内容はすべて報告を受けています。ただ、私は協議委員ではありませんから、意見を述べることもできませんし、その決定した内容に異議を申し立てることもできません。

 ただ私は、多賀城市のみなさんに、より多く新しい図書館を活用していただきたいし、「すばらしい図書館だ」「市民の誇りだ」と思っていただけるように、館長になりましたらできる限りの努力をしていくつもりです。

–3月から館長になるので、それからは責任を持つ。それまでも話は聞いているが、一切意見は述べないということですね。

照井 残念ながら意見を求められておりません。

–求められなければ述べないということですが、市民に対する責任はあるでしょう。

照井 指定管理ですから、指定しているのは多賀城市です。ですから、市民に対する責任は多賀城市にあります。

–つまり、館長になったら市民に対してすばらしい図書館をつくっていきます。でも具体的な準備は全部実務者に任せているということですね。

照井 そんなことはありません。私がその立場に具体的になりましたら、責任を持って取り組んでまいります。

–準備室長は責任ある立場ではないということですか。

照井 だって、私の隣の席に館長さんがいらっしゃいます。今の時点では、多賀城市の職員でいらっしゃる館長さんの指示のもとで進んでいます。ですから、質問にお答えするのは私が適切だとは思いません。

–協議会の会長であった方が、CCCに天下り、現在は準備室長で、今後新館長になるわけです。その方に質問するのが的外れなのでしょうか。

照井 今日、初めてそのように言われました。

–一般人はそう思うのではないでしょうか。

照井 決して私は、天下りをしたなどとは考えておりません。市民のために努力をしております。ご理解いただければと思います。

–わかりました。ありがとうございました。

「天下りではない」と照井氏は強く否定するが、新図書館の館長への就任要請は、なぜか雇用者のCCCからではなく、仕事を委託する側の市長サイドであったという事実だけをもってしても、世間の常識から遠く離れているといわざるを得ない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

ツタヤ図書館、市から「天下り入社」疑惑の新館長を直撃!「市長から声かけられた」のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!