誰もが知るあのディスカウントストアが労働基準法違反を犯していた。
東京都内の店舗で従業員に違法な長時間労働をさせたとして東京労働局は1月28日、店舗を担当する支社長や店長ら計8人と法人としてのドン・キホーテを、労働基準法違反容疑で東京地検に書類送検した。
同社の労使間で定められた時間外労働の上限は、「3カ月で120時間」だったというが、それにもかかわらず、なんと最長415時間45分もの時間外労働をさせていたという。この数字はあまりにも度を越えているが、長時間労働は多くの会社で日常的に起こっていることも現実だろう。
長時間労働に慣れてしまっている人はあまり意識していないかもしれないが、そもそも労働時間は週に40時間、1日8時間が上限とされている(労働基準法第32条)。「この規定は労働時間の最低基準を定めたもので、労働者の健康の保持やワークライフバランスを保つことを目的としたもの」と労働問題に詳しい佐藤宏和弁護士は説明する。
「最高裁平成22年12月20日判例によると、週40時間という規制は1週間にわたり累積した疲労からの回復等を図るものです。また、1日8時間という規制は、1日あたりの過度の疲労の防止等を図る趣旨で、それぞれ別の意義を有する独立した規定です。もし仮に使用者が両方の規制に違反して被用者を労働させた場合は、刑事上2個の罪が成立します」(佐藤弁護士)
ただし、これには例外がある。労使協定を締結し届出を行えば、32条の労働時間を延長し、労働させることができる(労働基準法第36条)。条文の番号から、「36(サブロク)協定」という名称で知られている。
この規定は、32条の例外として法定労働時間を超えた労働(時間外労働)や法定休日の労働(休日労働)をさせるための手続を定めたものだ。事業場(支店や工場)ごとに、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者と使用者が協定を締結して、延長が可能な労働時間を定めた上で行政当局に届け出ることによって、時間外労働や休日労働が法的に認められるようになる。協定の当事者に労働者の過半数代表を置いているのは、「従業員の集団的意思を反映させることで、超過労働の適切な規制が期待できるから」(佐藤弁護士)だという。