プロ野球界が金銭問題で揺れている。昨年、読売ジャイアンツ(巨人)の3選手が野球賭博を行っていたことが発覚して球界全体を揺るがす事態に発展した。さらに3月8日には高木京介投手が4人目の野球賭博関与者として摘発された。一連の流れを受けて、「球界のドン」といわれ、長年にわたってプロ野球界に強い影響力を持ってきた、巨人の渡辺恒雄最高顧問が辞任するほどに追い込まれたのだから衝撃は計りしれない。
これで問題は収束かと思いきや、今度は新たに「声出し」問題が明るみになった。どういうものかというと、試合前の円陣で声出しをした選手は、チームが試合に勝った場合にはほかの選手たちから祝儀として現金を受け取り、負けた場合には逆に全員に現金を支払うというものだ。この声出しは、12球団の内8球団で慣習として行われていたことがわかっている。
そもそも刑法では、賭博罪を犯罪のひとつと定めており、これに違反した場合には50万円以下の罰金が科せられる場合もある。刑事事件の問題に詳しい大空裕康弁護士は「刑法上の『賭博』とは、偶然の事情にかかる勝敗によって財物の得喪を争うことと定義されています。もっとも、偶然性の要件は緩やかに解されており、スポーツの試合のように実力を競うものであっても、その勝敗によって財物の得喪を争えば賭博に該当します」と語る。一方で、賭けを行ったとしても、賭博に当たらない場合もあるという。
「煙草や食事等、その場で消費できる物を賭けた場合は賭博に当たりません。また、金銭を賭けた場合であっても、煙草代や食事代程度の僅少額であれば賭博に当たらないとするのが現在の通説です」(同)
巨人は声出しについて、少額でゲン担ぎの意味合いもあり、賭け事とは異質であるため公表しなかったと主張しているが、本当に声出しは賭博罪に当たらないのだろうか。
「巨人で発覚した声出しのルールが、試合に勝てば声出しをした選手が参加者から5000円ずつもらい、逆に負ければ参加者全員に1000円ずつ支払うとすれば、刑法上の賭博に該当するでしょう。なぜなら、この金額は多額とまではいえませんが、一方で煙草代や食事代程度に僅少額ともいえないからです」(同)
NPBが不問に処する“合理的”理由
声出しは賭博罪に該当する行為であり、すなわち犯罪行為だ。では、声出しに関与した多くのプロ野球選手は、刑事責任を負うことになるのだろうか。