サンダースの政策は、かつてのアメリカの常識
サンダース氏が、公立大学の授業料無償化や、本当の国民健康保険の創設を主張していることに対し、「社会主義者」や「過激派」というレッテルを貼る人がいます。
しかし彼の政策の根本は、彼が育ち青年時代を過ごした50年代、60年代のアメリカにおいて、民主党も共和党も支持した政策なのです。ニューディール政策からの流れを汲み、フランクリン・ルーズベルト政権が第二次世界大戦中に兵士の制定した復員兵保護法により、兵士や復員兵はローンを借りて家が買えるようにし、また帰還兵の職業の安定も図るなど社会福祉を設定しました。
ドワイト・アイゼンハワー大統領は、1961年1月に有名な退任演説をします。
「私たちアメリカ社会を脅威にさらしている軍産複合体がある。軍と産業が結託して国民の自由や基本的人権を奪おうとしている。それはだめだ」と。彼はさらに言います。「兵器ひとつで何人の飢えた人を養うことができるか」
今そんなことを言えば、反戦活動家とみなされるかもしれない。しかし当時は、それがアメリカの常識でした。運動弾圧と戦争の親玉のような共和党のリチャード・ニクソン大統領でさえ、国内ではニューディール的平等や福祉を政策に掲げていました。
だから、歴史的な視点からいえば、サンダース氏の政策は非常に保守的なのです。今のアメリカの現実は、そういう保守的な人さえも許さない状況です。この現実を変えるには、ニューディール政策を政府がつくるよう促した1930年代の労働運動のゼネストや座り込み、路上に掘っ立て小屋の街をつくった野宿者の生存闘争から学ばねばなりません。
ファーガソンで行動を起こしたBlack Lives Matterの人々のように、選挙のための運動でなく、運動のための選挙という意識で活動する必要があります。Black Lives Matterは、どの大統領候補のことも支持せず、道路占拠や演説会もらいなどの直接行動を重ねてきました。
民主主義の本質は、代表を選ぶことではなく、政策や政治の内容を民衆が直接決定することです。直接行動はその縮図です。
アメリカでも日本でも、貧しい学生たちが軍や自衛隊に入らなければならない状況を打開するにはどうすればいいのか。権力者に迷惑をかけ、彼らの不当性を明るみにさらす非暴力直接行動が、そこでも求められています。民主主義に命を吹き込むために、もっと迷惑をかけていきましょう。
(文=林克明/ジャーナリスト)