4月30日に早稲田大学で開催された首都圏大学非常勤講師組合主催のシンポジウム「戦争と学生 - 経済的徴兵制をぶっ潰せ!」の講演を紹介する本連載。第3回は、マニュエル・ヤン氏(早稲田大学社会科学総合学術院助教・比較社会・思想史)の講演を紹介する。
ヤン氏はブラジル生まれで日本人の母と台湾人の父を持ち、アメリカで少年時代を過ごし大学に入学。大学入学直前、ブラジルからアメリカに国籍を変えた。大学入学を決めた途端に海兵隊のリクルーターから誘われたという自身の体験、また海兵隊に入隊した友人の体験を語った。
アメリカでは、経済的に苦しい学生が卒業後に軍に入り、戦地に赴き戦死したり、帰還してもトラウマに悩まされている人が大勢いる。
日本でも、大卒者が任期制自衛官となるケースが最近10年で倍増しており、安全保障関連法制の施行で紛争地へ派遣される可能性が高まっている。「経済的徴兵制」が現実味を帯びているのだ。
日米両国の状況を見れば、事態を打開するためには、当事者である若者や貧しい人々が大きな政治・社会運動を起こすことが必要だ。ヤン氏は、「若者よ、もっと権力者に迷惑をかけよう」と、非暴力・直接行動による運動を訴えた。以下に講演概要をまとめる。
学校が嫌いで転校を繰り返した
私は学校が大嫌いで、高校を6回転校しました。そして、「大学に行きたくない」と親に言いました。なぜなら、自分が英雄視している2人の人物が、共に大学中退者だったからです。
ひとりはドイツ系アメリカ人でニューヨークに生まれた作家、ヘンリー・ミラーです。彼はニューヨーク市立大学シティ・カレッジに入学し中退しています。それは、彼が大嫌いだったイングランドの詩人、エドマンド・スペンサーが授業で教えられていたからといいます。「スペンサーの『妖精の女王』というくだらない長詩なんて読みたくない」という理由で大学をやめたのです。
ミラーは仕事を転々とし、各地をさまよって1934年にフランスで小説『北回帰線』を出すのですが、本国のアメリカでは発禁処分になってしまいます。
英雄視していたもうひとりの人物は、中学生のときから熱心に聴いたミュージシャンのボブ・ディランです。彼は公民権運動の主題歌のような『風に吹かれて』という曲を書き、ロックにも革命を起こした人です。1959年にミネソタ大学に入学するものの、フォーク音楽に没頭しすぎて中退し、ニューヨークへ行きミュージシャンになりました。