今国会の最大の争点であるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の審議がいよいよスタートした。アメリカの両大統領候補も反対を掲げるTPPだが、日本にとってはどんな影響があるのか? そのことも、ほとんど知られていないのが実情だ。このままでは国民的議論がなされないまま、批准される可能性がある。
そんなTPPに対して、早くから反対の意向を表明しているのが、山田正彦元農林水産大臣。民主党政権時代、担当大臣としてTPPを知る立場にいながら、「これは国益に反する不平等条約である」と断言してきた人物だ。
そんな山田氏が著した新刊が『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』である。本書は、専門家からなる分析チームが6,300ページにも及ぶTPP協定書を精査しわかった衝撃的な事実がまとめられている。
そんな本書への導入的企画として、山田氏の盟友で、アーティストであり、政治活動家でもある三宅洋平氏との対談が行われた。
その模様はすでにYouTubeで公開されているが、ここではそのテキストバージョンを公開する。(※一部編集を加えている箇所があります)
■遺伝子組み換え食品のターゲットは日本市場だ
三宅洋平(以下、三宅) 今日はTPP協定についての対談ということでよろしくお願いします。山田さんは、既に苫米地(英人)さんと素晴らしい対談をされていますが(編注:「TPPは絶対批准させてはいけない」、「同」第2弾)、TPPをめぐっては最近、協定文書や説明文書にたくさんの誤訳や表記ミスが見つかりましたね。
山田正彦(以下、山田) TPP協定文書は全部で6,300ページありますが、日本政府が翻訳しているのは1,800ページだけなんです。今回見つかった間違いも、あくまでもその1,800ページの中だけでなんですね。もともと、奇妙なことに、TPP協定文書には日本語の正文がないんですよ。
三宅 正文というのは、正式な条約文ということですか。
山田 ええ。このTPP協定というのは、多国間との契約ですが、そうした場合は通常、それぞれの言語で正本と副本を作成するんですね。それで、正本はお互いに交換し、副本は参考資料として自分たちで控えておくんです。ところが、今回のTPP協定に関しては、日本語だけが正文になっていないんです。
三宅 他の言語は正文になっているんですか?
山田 英語、フランス語、スペイン語にはなっています。にもかかわらず、なぜ日本語だけ正文になっていないのかと関係者を問いただしたら、「政府が求めなかったから」というんです。
三宅 それはいつの政府ですか?
山田 現政権です。これは結構な問題で、日本語の正文がないと、結局、英語での解釈になってしまいます。
三宅 ということは、不平等条約ですね。
山田 そうです。たとえば、農産物の関税撤廃については、英語で「撤廃」となっているところが、日本語では「関税措置」となっている。「措置」と「撤廃」では全然違うでしょう? そんな状態にもかかわらず国民に対しては、「農産物の重要5品目に関しては(関税撤廃から)守られた」と説明しているんですよ。もし、TPP協定が日本語での正文になれば、政府は国民に本当のことを説明しなければいけなくなる。そうすると国会審議がもたないし、国民も怒るでしょう。実際、TPP交渉資料も全部黒塗りです。
三宅 ひどい話ですね。TPP関連法案をめぐっては、もう今国会で承認されるかどうかという段階にまできているにもかかわらず、まだ多くの人に周知されているとは言えないし、かくいう僕も、あまりにも動き出すのが遅くなってしまったな、という思いです。