三宅 みんなが安い外国産の米を食べるのが普通になれば、それに疑問を持つ人もいなくなるでしょうしね。
山田 そうです。ここ20年間で、魚屋さんや駄菓子屋さん、酒屋さんといった個人経営の小さなお店がどんどんなくなってしまいましたが、それも、大店法が廃止されてからです。本来、農業や漁業というのは、アメリカのような企業型ではなく、ヨーロッパのように家族型でなければならないと思うんですね。それで、農水大臣時代は、農家に対して直接、戸別所得補償制度を実現しました。これによって、たった1年で所得が17%上がったことになる。本当は、そうすれば、農業も漁業も日本の第一次産業は生き残ることができるんです。
■農業だけじゃない!公共事業は外資に、そして著作権法違反で恣意的逮捕が可能に!?
山田 しかしこのままいくと、日本から稲作文化が、祭りが、田舎が消えていってしまいます。田舎に残されている学校なんかも消えていく。僕の田舎でもずいぶん小学校が消えていきましたが、アメリカでは公立の小中学校が4年間で4,000校も閉鎖しているんです。
三宅 4,000校も?
山田 それで民間の株式会社に委託したんです。それによって30万人の教職員のクビが切られましたが、それでどうなったかといえば、残されたのは荒れた公立学校で、子どもたちは授業を受けられる状態ではないんです。だから、田舎の採算のとれない学校は閉鎖され、金のあるところは私立化されていく。カネを持っていないと教育を受けられなくなっているんです。同じようなことがほかでも起こっていくでしょう。たとえば、今、沖縄の水道事業はどこがやっています?
三宅 市の水道局ですよね?
山田 今はそうです。ところが、TPPに批准すれば、それも民営化され、株式会社化されてしまいます。実際、今から3年前に、当時、副総理だった麻生太郎さんがCSIS(米戦略国際問題研究所)の講演で、「日本の水道事業はすべて民営化する」と発言しています。マスコミは1社しか報じていませんが。
三宅 マイケル・グリーン(CSIS上級副所長、当時)さんも同席していた講演ですよね? 僕もYouTubeで見ました。麻生さんが、「これは日本のためにやっているんだ」という顔でおっしゃっていたんで、根本的に分かっていないんじゃないか、CSISの人たちに何か吹きこまれてるんじゃないかと思ってしまいました(苦笑)。
山田 水事業で一番有名なのは米ベクテル社ですが、ボリビアで水道事業を買い取って――。
三宅 あぁ、民営化によって、暴動が起きたり武装蜂起が起きたりしていますよね。
山田 ええ。ベクテル社がそれまでの水道料金より3倍も値上げをしたものだから、仕方なくバケツで雨水を確保しようとしたら、同社が「雨水もうちの会社の権利だ」と言い出して、遂に暴動が起きたんです。日本でも松山市の上水道事業(の設備保守)をフランスの企業が獲得しています。
三宅 ヴェオリア社ですね。