福岡県北九州市のテーマパーク、スペースワールドが、約5000匹の魚を氷漬けにしたスケートリンクをつくり、「海の上で滑る感覚を味わう」とうたったイベント「氷の水族館」を企画したが、「悪趣味」「生命に対する冒涜」などと批判が殺到して中止するに至った。
一方で、スペースワールドを擁護する意見も多く、インターネット上では喧々諤々の議論が繰り広げられている。各所でアンケートなどの調査も行われているが、擁護派のほうが多数を占める傾向にある。「残酷だとは思わない」「中止する必要はなかった」との意見が約7割を占める調査もあった。
つまり、少数派であるにもかかわらず、強く抗議する意見が殺到したことで企画が中止に追い込まれたことになる。当のスペースワールドに問い合わせたところ、賛否両論の意見があったようだが、不快に思った人が多くいたことを重くみたとの判断だという。
「さまざまなご意見を頂戴しておりますが、多くのお客様に対して不愉快な思いをさせてしまったことは紛れもない事実あり、大いに反省している」「魚達についてはしっかりと供養いたします」(スペースワールド)
近年、一般消費者などからの強い抗議によって、企業が企画を中止したり、テレビCMの放送を取りやめるといった事例が頻発している。その抗議が多数派の意見とは相違していたとしても、中止せざるを得ないものなのだろうか。企業のリスクマネジメントにも詳しい経営コンサルタントの高井尚之氏に話を聞いた。
「転ばぬ先の杖」の経営判断
–そもそも、企画を運営する際、どの程度の批判を想定しておくべきものなのでしょうか。
高井尚之氏(以下、高井) その企業・団体(や官公庁)がどの位置づけなのかによりますが、一般消費者や市民を相手にする場合は、「転ばぬ先の杖」といった視点は欠かせないと思います。その視点とは、「男性目線、上から目線ではないか」「不快感を持たれないか」などです。
ちなみに、この一般消費者でも、「(1)同じ嗜好のマニアを相手にする場合」と「(2)老若男女さまざまなお客を相手にする場合」では異なるというのが私の認識です。
たとえば、(1)はサバイバルゲームの場所提供など、(2)は今回のようなスケートリンクの場所提供などです。言うまでもなく、(2)の場合は特に上記の視点が必要となる時代です。