日韓関係の緊張が再び高まってきている。
8月24日、日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の延長終了の通告日が到来する。GSOMIAは北朝鮮の軍事情報などの共有を目的として2016年11月に締結。1年単位で協定を延長することができ、終了する場合には90日前までに通告することになっている。その期限が毎年8月24日なのだ。
昨年、日本政府が韓国の貿易管理の不備を指摘し、安全保障上の懸念があるとして、輸出手続きの簡素化対象(通称:ホワイト国)から排除したことに対抗し、韓国は自動延長を拒否してGSOMIAの終了を宣言。だが、米国から圧力をかけられるかたちで韓国政府は昨年末、韓国側からいつでもGSOMIAを終了することができるという「条件付き終了猶予」を発表。
それにより、韓国は現在でもGSOMIAは任意に終了時期を決定できると考えているようで、「8月24日の期限」事態が無効になっていると主張している。キム・インチョル外交部報道官は8月4日の定例ブリーフィングで、「GSOMIAは日付に関係なく、韓国政府がいつでも終了でき、1年ごとに延長するという概念は現在適用されていない」と述べた。
さらにキム報道官は、日本の輸出規制措置の撤回の動向を見て、GSOMIAを延長するか終了するかを判断するとの立場を強調した。
日韓の懸案材料はGSOMIAだけではない。竹島の領有権問題、慰安婦問題などに始まり、現在は元徴用工訴訟で日本製鉄(旧新日鉄住金)の資産を差し押さえる命令が出されたことで、緊張の度合いは高まっている。韓国側が日本製鉄の資産を現金化するようなことになれば、対立構造は確実に激化する。
ほかにも、米国が主張する主要7カ国(G7)の拡大に関し、韓国を主要国に加えるか否かも議論が交わされている。世界貿易機関(WTO)事務総長選挙にも韓国人が候補になっていることから、両国の対立は不可避だろう。日本製産業用バルブに対して韓国政府が反ダンピング(不当廉売)課税をかけていたが、日本がWTOに提訴して勝訴。韓国は8月19日にこの課税措置を撤廃したが、WTOの判断とは関係ないと主張。そもそも韓国は敗訴していないとの立場を強調している。仮に韓国人が事務総長に就任すれば、WTOにおける日韓の訴訟のかたちも変わってくる恐れはある。そのため、水面下では激しい駆け引きが行われているといわれている。
文在寅大統領は15日の光復節祝辞で元徴用工問題について触れ、「韓国政府は、いつでも日本政府と向き合う準備ができている」として、対話の用意があると強調。その裏には、両国の関係が改善するのも悪化するのも、日本側の対応次第との考えが透けて見える。
だが、一方で日本製鉄の資産を現金化すれば、激しい制裁合戦に突入することは明らかで、韓国政府としては避けたいのが本音だろう。韓国のジャーナリストは、韓国政府が日本に非公式に解決策を打診していたと明かす。
「実は韓国政府は、最高裁判決に基づいて日本企業の資産を現金化した場合、その損失を韓国政府が補填するという案を提示したものの、日本政府が拒否したといわれています。日本政府は、あくまでも1965年の日韓請求権で解決済みであって、あとは韓国国内の問題という立場を貫いているわけです。もはや両者の溝は埋めがたく、それぞれが相手側の動きに合わせた対抗措置を練っている状況のようです」
日韓関係は過去最高に緊迫した場面に突入しているといえるだろう。
(文=編集部)