【森友学園問題】、財務省は本当に記録を廃棄したのか…高まる疑惑と過去の「隠蔽事件」との類似性
大阪府豊中市の国有地が、格安の価格で学校法人森友学園に売却された問題で、自民党の参議院議員、鴻池祥肇・元防災担当相の事務所と、同法人の籠池泰典理事長らのやりとりが記された「陳情整理報告書」が明らかにされた。
それによると、本件で鴻池氏側が森友学園から受けた相談・陳情は15回に及び、近畿財務局からの報告も受けていた。籠池理事長らが「政治力」を最大限に利用して、有利な状況をつくり出そうとしていたことがうかがえる。このような、当時つくられた記録の力は大きい。
財務省の不可解な対応
同法人は、ホームページでこの「報告書」を、「事後的に捏造された文書で、献金や寄付を強要していた事実を揉み消そうとする態度には嫌悪感しか感じません」と反論した。
鴻池事務所の記録は、報じられたものが本件に関するすべてであるか、後から部分的に加筆した可能性を排除できるのか、などの考慮しなければならない問題はある。しかし、このような文書を「捏造」して、鴻池氏にいったいなんのメリットがあるのか。鴻池氏が2回合計20万円の献金を受けていたことも、この報告書が明らかになる前には、なんら問題視されていなかったのだ。
国会で報告書の存在が明らかになった後、すぐに鴻池氏自身が記者会見し、独特の語りっぷりで事情説明する手際のよさで、同氏のダメージは最小限に抑えられたとはいえ、この記録を元にその説明の矛盾点も突かれている。つまり、鴻池氏本人は、2014年4月に籠池夫妻から差し出された「紙に入った物」を突き返した後、「出入り禁止」にしたと言うが、記録によれば、その後も神戸にある同氏の事務所が森友学園の相談に応じていた。
このような書面をわざわざ「捏造」して、同法人とのかかわりを表沙汰にすることで、鴻池氏が得るものがあるとは思えない。
当事者が過去のことを思い出して語る場合には、記憶が一部抜け落ちたり、本人の願望が入り交じったりすることもあるが、記録は詳細なものであるほど、当時の状況を誠実に説明してくれる。やはり、記録の力は大きい。
それで思い出したのが、郵便不正事件に巻き込まれた厚生労働省の局長だった村木厚子さん(後に事務次官を務め退官)の裁判で、当時民主党副代表だった石井一参議院議員の手帳が果たした役割だ。
検察側が描いていたストーリーによれば、自称障害者団体の代表K氏は、かつて秘書として務めた石井氏の議員会館内の部屋を訪れ、障害者団体としての証明書を発行してくれるよう厚労省への口利きを頼んだことになっていた。石井氏が厚労省障害保険福祉部長に電話をし、同部長が当時は同部の企画課長だった村木さんに「政治案件なのでよろしく」と証明書偽造を促したのが、事件の出発点だったというのが検察の主張だった。
石井氏は、40年来、日々の行動を細かく手帳に記録する習慣があった。法廷に弁護側証人として呼ばれた石井氏は、K氏が石井氏に会ったとしている日は、「朝早くから夕方まで同僚議員らとともに千葉県成田市のゴルフ場でプレーした」と証言。手帳にはゴルフ場の名前、開始時刻、各人のスコアなども書かれていた。さらに「その後は赤坂の料亭での会合に出席しており、議員会館には入っていない」と述べ、それに見合う手帳の記載もあった。
これによって、事件の出発点は消えた。
検察側は、事件のいわばキーパーソンのひとりともいえる石井氏に対し、村木さんを起訴した後に通り一遍の事情聴取をしただけだった。しかも、その席に石井氏は当時の手帳を持参したのに、取り調べを行った主任検事は、ぱらぱらとめくっただけで、ろくに中を改めることもしていなかったというのだからあきれる。いちいち記録を確かめなくても、関係者が検察側ストーリーに沿った供述をすれば、有罪に持ち込めると高をくくっていたのだろう。