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飯塚幸三被告、高齢を理由に執行猶予の可能性…下津裁判長、公判で遺族の遺影持ち込み禁止

文=編集部
飯塚幸三被告、高齢を理由に執行猶予の可能性…下津裁判長、公判で遺族の遺影持ち込み禁止の画像1
東京地方裁判所(GettyImagesより)

 東京・池袋で昨年4月、乗用車で母子を死亡させ9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁で始まった。

 9日放送の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)でも、同公判の内容を詳報。飯塚被告が、起訴内容について「アクセルペダルを踏み続けた記憶はありません。車に何らかの異常が発生し、暴走を止められなかった」と否認し、無罪を主張したことなどを取り上げた。

 同コーナーでは、有識者として交通事故に詳しい弁護士による「89歳という高齢を考慮し、執行猶予がつく可能性が高い」との見解も紹介され、MCの羽鳥慎一アナウンサーが「高齢だから事故を起こした可能性があるわけですけれど、高齢だから執行猶予が着く可能性があるって……」「なんなんだろうこれは」と困惑する姿が映し出された。この報道を受け、インターネットでは飯塚被告の厳罰を求める声が一斉に高まりつつある。

立川の高齢女性の暴走事故では実刑判決だったが……

 本当に飯塚被告が執行猶予になる可能性は高いのか。全国紙社会部記者は話す。

「池袋の事件は、よく2016年11月、立川市の国立病院機構災害医療センターの敷地内で車が暴走し、歩道を歩いていた八王子市の会社役員・安和竜洋さん(当時39)と小平市のパート従業員・市川妙子さん(当時35)がはねられて死亡した事故が引き合いに出されます。

 自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた女性(当時85)に対し、東京高裁は18年10月31日の控訴審判決で、禁錮2年とした一審東京地裁立川支部判決を支持、被告側の控訴を棄却し実刑が確定しました。

 一審で弁護側は女性が高齢であることなどを指摘し、執行猶予を求めましたが、地裁立川支部は『85歳と高齢だが、認知機能の衰えに起因する事故ではない』とその主張を退けていました。ただこの事件では、事故発生時の女性の『責任能力』や『高齢による認知機能の有無』に焦点があたったこともあり、年齢そのものを情状酌量の要素とした事例ではありません。

 一方、飯塚被告の主張は『しっかりアクセルを離していた』などと、事故時はっきりとした認識があったと述べています。公判でもかくしゃくとしているように見えました。あくまで個人的な見方ですが、高齢による責任・認知能力が欠如しているようには見えません。司法が今回の件をどのように判断するのか注目されます」

東京地裁刑事部は今回の公判でエースを投入

 東京都内の刑事事件に詳しい弁護士は次のように今回の公判を見ている。

「今回の公判の担当が下津健司裁判長だったことを知り、地裁の本気度が窺えました。下津さんは2019年に発生した東京都杉並区のアパートで乳児院勤務の保育士女性(当時32)が殺害された件や、日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)の報酬過少記載事件で、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪に問われた日産元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(64)の件を担当する地裁刑事部のエースのひとりです。

 ただこれほど世論が沸騰している事件ですので、かなりのプレッシャーがかかっているのではないでしょうか。8日の飯塚被告の公判に関して、一部報道で下津さんが被害者家族が犠牲者母子の遺影の持ち込みを禁止した件が物議を醸していました。そうやって厳密すぎるほど法律とルールを重視しようとする姿勢からは、あくまで法のみに則ってこの公判に臨もうとする強い意志を感じられます」

 無罪を主張する飯塚被告に対して、インターネット上で批判の声が殺到している。一方、ニュースサイト『現代ビジネス』(講談社)は9日、記事『「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと 家族は「逮捕してもらいたかった」と話す』を公開。仙台市のNPO法人World Open Heartの阿部恭子代表が飯塚被告の家族に対する社会的なバッシングに対して反論したのだが、これも多くの反発を招いている。

 こうした沸騰する世論の影響はどの程度、公判に影響を与えるのだろうか。前述の弁護士は話す。

「裁判官はおおむね2通りの考え方を持っています。裁判員裁判で始まった、国民の声をもっと司法に反映させたほうが良いという意見と、批判したり擁護したりとくるくると変わる報道や民意に左右されることなく、現行の法律に則って判断を下すべきだという意見です。それぞれが、どちらか一方の主張に分かれているわけではなく、多くの裁判官がそれぞれのメリット、デメリットを勘案し、試行錯誤しながら法廷に臨んでいます。ちなみに下津さんは英国の陪審員事情などにも明るい方です」

 果たして、どのような判決がでるのだろうか。
(文=編集部)  

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