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江川紹子の「事件ウオッチ」第82回

大手メディアが伝えない画期的判決!金融庁課徴金命令で初の取消判決…国家が犯した「2つの犯罪」とは

文=江川紹子/ジャーナリスト

「ひとつは、金融庁が冤罪をつくってHさんの人権を侵害した。もうひとつは、本当の犯人を逃していることだ。明らかに大がかりなインサイダー取引があったのに、それがまったく解明されていない」

 裁判で、課徴金命令の不当性が明らかになっても、それによって発生した損害が補填されるわけではない。Hさんの場合も、金融コンサルタントの仕事はやめざるをえず、長年携わってきた金融関係の仕事から撤退した。裁判を維持するのにも、費用などがかかった。そうした損害を回収しようとすれば、改めて負担を背負って国家賠償訴訟を起こさなければならない。

 課徴金は、前科になるわけではなく、その金額も不正によって得た利益を剥奪する趣旨なので、それほど高額でないことも少なくない。Hさんのように、むしろ争うほうが高くつく場合では、不服があっても泣き寝入りするケースもあった。

 ところが最近、課徴金命令の取り消しを求める訴訟が次々に起きている。5月30日付日本経済新聞は次のように報じている。

「提訴件数は2010~12年度は各1件ずつだった。しかし13年度は3件、14年度は6件と急増した。15年度以降は減ったが、17年度に入りこれまでに5件が提訴された。インサイダー取引についての争いが最も多い」

 今回のケースを猛省し、司法が求める丁寧な事実認定と厳密な法の適用に努めないと、制度そのものへの信頼も損なわれる事態に陥るのではないか。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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