中高生少女の監禁被害も常態化
国内の未成年者が同様の被害にあうケースも多い。今年8月には1年間にわたって14歳の少女に売春を強要していた男女2人が捕まった。16年10月には17歳少女、同年8月には13歳少女を監禁・売春を強要していた男らに、それぞれ有罪判決が下っている。
また同年7月には15~20歳の家出少女・女性6人、6月には16歳の家出少女1人、3月には16歳の少女ら2人に同様の犯行を働いた男女グループが、それぞれ摘発を受けた。摘発された男女のなかには、被害少女と同年代の少年少女もいる。
家出少女の被害が多いことを受け、ソウル市は7月に夜間専用の「避難所」を開設している。生活費に窮した家出少女に市が寝食を提供することで、安易な儲け話に釣られないよう保護する計画だ。
売春街一掃を目指す行政の苦心
「588」のような昔ながらの売春街は、02年時点で韓国全土に69カ所。16年の調査では42カ所に減っている。残っているところは、ほかに住む場所も生きる術もない女性らがしぶとく居座り続けている状態だ。
韓国政府は売春街の一掃に向け、15年からさらに取り締まりを強化している。同時に摘発された女性がまた売春に逆戻りしないよう、自立支援にも取り組まなくてはいけない。儒教に基づく性差別が根強かった韓国では今、その反動として女性の権利保護が行政の大きなテーマだ。
国内3大売春街の1つ、通称「砂利広場」(チャガルマダン)を抱える韓国南東部・大邱(テグ)市は、今年末までにその強制閉鎖を計画している。これにあたり大邱市は昨年12月、全国で初めて売春女性の自立に支援金を支給する条例を制定した。「砂利広場」で働く150~200人近い女性に、1人最大200万ウォン(約19万円)を支給する内容だ。だが事業を担当する大邱市女性家族政策官室には、「税金の無駄遣い」との抗議が殺到しているという。
取り締まり中止を要求するデモも発生
かつて400人近い女性がいた韓国南西部・全州市の売春街、通称「善美村」(ソンミチョン)。ここもまだ約80人の女性が残って売春を続けている。
全州市もその再開発と摘発を進めているが、今年7月には売春女性及び業者ら約150人による反対デモが起こった。「取り締まりを中止して生存権を保障せよ」というのがその主張だ。法律に違反しながらも公権力に反発して権利を主張するというのは、善くも悪くも韓国人らしい。大邱市のような自立支援も、当事者たちのこうした訴えで勝ち取った格好だ。
かつて日本人リピーターも足繁く通った韓国の売春街は、こうした葛藤を経て消えつつある。だが一方でより巧妙化・密室化した新しい売春は、国境も越えながらいっそう猛威を振るっているのが実情だ。
(文=高月靖/ジャーナリスト)