与党の質問時間を長くしろと騒ぎ出したのは、やたら不祥事の多い“魔の3回生”とのこと。単に不祥事をやらかす者が多いだけでなく、5年近くも国会議員をやっていて、まったく国会の意味がわかっていないらしい。それに首相をはじめとする政権幹部がホイホイ乗ろうとしていることに、あきれる。国会を、与党議員による首相賛美の場にしてどうするのか。
かつて麻生政権時代の質問時間は「与党4割、野党6割」だったが、民主党政権時代に、野党となった自民党の要求もあり、一時「与党1割、野党9割」となり、「与党2割、野党8割」の配分で第2次安倍政権以降も続いていた。
それにもかかわらず、巨大与党となった自民党が、今度は野党の質問時間を奪おうという動きが出たことは、「謙虚」とは似ても似つかぬ「傲慢」である。
こうした態度を見るにつけ、安倍首相や自民党は、もはや「国権の最高機関」である国会を、政権が押し進めたい事柄を追認するための機関としか見ていないと言わざるをえない。
「国難」ここに極まれり、である。
国会を軽視し続ける安倍政権
安倍政権の国会軽視の具体例としては、2度にわたる野党の臨時国会の要求無視がある。
1度目は一昨年。2015年10月21日に、民主、維新、共産、社民、生活の5党が環太平洋連携協定(TPP)締結交渉の大筋合意をめぐる審議や、内閣改造による10人の新閣僚の所信聴取を行うべきとして、臨時国会の召集を求める文書を衆議院議長に提出した。だが、政府・与党は首相の外交日程などを理由に拒否。衆参両院の予算委員会の閉会中審査を1日ずつ行っただけだった。
2度目が今年で、6月22日に民進、共産、自由、社民の野党4党が、衆参両院副議長を通じて臨時国会を要求。しかし政府・与党は、やはり閉会中審査を開くだけで、臨時国会の召集には応じなかった。そして、9月25日にようやく開いた臨時国会では、所信表明や代表質問を行うこともなく、冒頭で衆議院を解散した。
憲法53条には、こう書かれている。
「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」
国会の召集権は、実質的には内閣にある。しかし憲法学の教科書は、この規程は「少数派の意向を尊重するため」に設けられたとして、次のように説明している。
「したがって、臨時会の召集要求があった場合、内閣が議案の準備が整っていないとか、その他政治的な理由で召集を不当に延期することは、制度の趣旨に反するであろう」(芦部信喜『憲法』)
安倍政権の対応が、憲法の趣旨に反することは、明らかではないか。