「コジンジョウホウ」という思考停止ワード
昨今、「コジンジョウホウ」という言葉だけが独り歩きをしてしまっています。当職がしつこく理事長を務めているマンションには、たまにマンション内でイタズラをしている“クソガキ”がいるのですが、注意する際、「君たちの親にも注意するから、どこの部屋?」と聞くと、「コジンジョウホウだから答えません」とふざけた返事をすることがあります。このようなとき、当職は「では、裁判所にきみたちを呼び出して尋問するけどいいね」と大人げない態度をとり、ことを解決することにしています。
話を戻すと、このように子どもから大人まで、「コジンジョウホウ」という言葉ですべてを拒絶することができ、すべてを解決することができるという完全な思考停止に陥っていることがわかります。
前述の知人からの相談も、「PTAが学校の名簿を使うことはコジンジョウホウの問題だ!」というバカの一つ覚えのような発想から発生しているのでしょう。
そこで、実際に去年施行されたばかりの改正個人情報保護法の関係条文をしっかりとみていきましょう。
改正された個人情報保護法の考え方(第23条を中心に)
先にお断りしますが、今回の改正は多岐にわたるので、今回の問題に関係のあるところだけフォーカスすることをお許しください。
まず、基本的なところですが、個人情報保護法第23条は、「本人の同意を得ずに、個人情報を第三者に提供してはいけません」と規定しています。したがって、学校がPTAに対し、「個人情報データベース(児童名簿)」を使わせることは、ダメということになりそうです。
しかしながら、法律というものは実際の都合不都合、実情にあわせてとてもよくつくり込まれており、この後の「例外」についてしっかりと理解しなければなりません。
実は、個人情報保護法は、わざわざ上記第23条の例外として第23条第5項を設け、以下の旨を規定しています。
<次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
三 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。>
要するに、ざっくり言うと「『ある人や団体と個人情報を共同で使うこと』を、あらかじめ本人が知ることができるような状態にしているときは、共同で何かを行う際に個人情報を使う分においては、その特定の人や団体は、そもそも個人情報を開示してはならない『第三者』にあたらないから、個人情報を使うことができる」ということです。