金融資産課税で大幅税収増を
――しかし、財源の確保という大問題があります。
黒川 これらの政策は、全体で40兆円くらいあれば可能です。細かな数字はもっと検討しなければなりませんが、大まかな財源の方向性だけお伝えします。
まず、3億円以上の金融資産に課税します。これで年間10兆円くらいの新たな財源が生まれます。全体の個人金融資産は1818兆円。3億円以上ある人たちがちょっと課税されても困りません。さらにこれを累進にしていきます。超高額資産家には、かなり多めに払ってもらうわけです。
――黒川さんは3億円以上の金融資産への課税を主張していらっしゃいますが、純資産1億円から課税すべきだという意見も多いですね。私の個人的な意見としては、純金融資産5000万円に1%課税して、そのあとは細かく段階的に税率を上げるべきではないかと考えています。ほかにはいかがですか。
黒川 次に、大企業の内部留保に課税。規模によって税率は変えますが、これにより約5兆円の税収増を見込みます(大企業の内部留保は406兆円=2016年度)。
3番目に、為替取引税。やたら行われている為替取引に課税したら10兆円~20兆円が見込めます(黒川氏が昨年の総選挙で配布したビラによれば、0.1%の為替取引税で10兆円以上となる)。
これを言うと、海外に資金が逃げるのではないかと指摘されます。そこは議論する必要はありますが、おそらくそうはなりません。アメリカは借金まみれの国でドル自体の価値が揺らいでいるから、基軸通貨を中国元にしようとか、できるだけドルから離れようとか、石油取引の決済を元やルーブルでやろうといった話がこれまでに出ていました。円以外にどこに逃げ場があるのでしょうか。
だから、為替取引にたとえば1%課税すると、むしろ投機的でめちゃくちゃなスピードで取引するようなことが減り、より実態的に行う取引の比率が高まるからいいのではないかという意見もあります。
いま私が話したように、いままでまったく導入してこなかったことを実行すれば、年間40兆円の新たな財源を、理屈上はつくれます。
なお「不公平な税制をただす会」が毎年発表している財源試算では、不公平税制を改善すれば2018年度は、あらたに約38兆円の増収が見込まれます。
まずはここまでやってみる、次にここまでとロードマップを決めて、最終的に出した政策を実現できるような財源をつくることも可能ではないですか。
5年以内に全部政策を実行できれば、日本の国のかたちは変わると思います。普通に働いて真面目に暮らしていったら幸せだなと思える、あたりまえの国に戻ります。
日本は18兆円の資産超過
――しかし、国債が増えているから、社会福祉が必要だから、教育に必要だからと、理屈をつけて消費税増税が必要だと主張している人も相変わらずいます。
黒川 確かに、日本の国債発行額は増えているものの、資産も増えています。2016年末時点で日本政府は約18兆円の資産超過で、赤字か黒字かでみたら黒字です。企業でも大きくなれば運転資金を増やすために借金を増やすことがあるのと同じです。借金が増えればただちにダメというわけではないでしょう。
「消費税増税は必要」という洗脳を解き、何がどうなっているかの事実を知り、議論していきましょうということです。お金は日本にたくさんあるんです。貿易収支、財政収支、為替収支を含めた経常収支は、統計を取り始めてからずっと黒字です。国としてお金の出入りを見ると、日本は入ってくるほうが多い。
対外純資産は、16年末で349兆円超になっています。すごく乱暴に言うと、国としての貯金です。アベノミクスで個人の金融資産は200兆円増えて16年末時点では1818兆円です。大企業の内部留保は100兆円増の406兆円です。お金は増え続けているのに賃金は減り続けているという矛盾が起きています。
私たちは誰と闘うのか。個人の金を吸い取る国際金融資本、グローバリズムを利する政治を認めるのか。反対に庶民のために私たちが立ち上がるのか。この二者択一です。
いま総選挙の可能性もささやかれるなど事態は流動的ですが、来年夏には必ず参議院選挙があります。経済政策で一致した無党派市民が一挙に選挙になだれ込み、市民政権樹立へ弾みをつけたい。そして、勝つための戦術があるのです。
(文=林克明/ジャーナリスト)
【関連情報】
■6.6オールジャパン総決起集会「愛・夢・希望の市民政権樹立へ!」
.日時:6月6日(水) 午後4時開場 午後4時30分開会
場所:憲 政 記 念 館 講 堂(国会議事堂前)
住所:東京都千代田区永田町1-1-1
丸ノ内線・千代田線 国会議事堂前駅下車 2番出口から徒歩7分
有楽町線・半蔵門線・南北線 永田町駅下車 2番出口から徒歩5分
参加費:無料