組織のない市民が勝利する極意
経済政策を掲げて無党派市民が国政選挙で闘うといっても、疑問を持つ人が多いのではないだろうか。
・強固な組織もない人々が、政権与党と闘って勝てるのか?
・野党との関係はどうするのか?
・へたをすると、野党統一候補擁立に水をさす結果にならないか?
こうした疑問と心配が起きるのは当然だろう。
しかし、政党公認でなく、無所属候補が野党を巻き込んで勝利した例は過去にいくつもある。それも、議員の1人区同様に、1人しか当選しない首長選挙でだ。
たとえば、注目の新潟県知事選挙(6月10日投開票)。新潟県内の過去の選挙を見ると、興味深い事実が浮かび上がってくる。
まず2002年の新潟参院補選。同県ではもともと自民党が強く、そのうえ当時は小泉純一郎旋風が全国で猛威をふるっており、野党系候補が勝つなどあり得ないといわれていた。しかし、市民団体が先頭になって民主・自由・社民・連合が無所属の黒岩宇洋氏を擁立し、自民公明が推す候補、共産党が推す候補を大差で破って当選した。
さらに、前回の16年知事選でも、柏崎刈羽原発の再稼動問題という明確な争点のもとに無所属の米山隆一氏を共産・社民・自由(生活)・新社会・緑の党が推薦した。民進党は推薦も支持もしなかった。結果は米山氏の勝利だった。
野党の政党名が並んでいるのを一見すると「野党統一候補」ではないかと思われるかもしれないが、実際は市民や市民団体が動いていることを見逃してはならないだろう。市民主導での野党共闘だったのだ。
似たようなことは、06年の滋賀県知事選でも起きた。ほとんど無名に近かった嘉田由紀子氏が、「もったいない」と新幹線新駅建設反対に争点を絞り、無所属で立候補して勝利した。社民党の支持は受けたが、実質的には無党派。それが自民・民主・公明から推薦を受けた現職と共産党推薦候補の2人を破っての当選だった。
1人しか当選できない1人区や首長選で、無党派市民主導で勝った選挙に共通する極意がいくつかある。
第一に、市民側がわかりやすい争点やスローガンを先に出し、有権者に二者択一を迫ること。これは、黒川氏がわかりやすい政策を与党より先に提示することの大切さを主張している点に通じる。たとえば、消費税廃止などだ。社会が二分化している現在、自民党と真っ向から対決する政策を先に出せば支持される可能性がある。
第二に、市民主導で動き、そのあとに野党の支持を取り付けること。
第三に、納得できる候補者を話し合いで決めること。