イタリアの「五つ星運動」は20人の集まりから
前述のように、「5大経済政策」を無党派市民が議論して主導権を握ろうと主張する黒川氏は、こう説明する。
「安保法制反対や護憲も大切ですが、生活に密着した経済政策を、市民が集まって議論して盛り上げたほうがいい。ひとつのイメージとしてイタリアの五つ星運動という政党があります。
3月のイタリア総選挙で、彼らは第一党になりました。政党ができてたった9年間で支持率33%を得ています。従来の保守陣営でもリベラル陣営でもない勢力です。日本とイタリアでは選挙制度も政治情勢も違いますが、日本でも全国で同時多発的に彼らのような動きをすればいいと思います。
昨年来日した五つ星運動のナンバー3であるリカルド・フラカーロ氏は、彼が地元で運動を始めたときは、わずか20人が集まり、今後の方針や政策を話したと明かしていました。もしかしたら、ひとりも来ないかもしれないとも思ったが、20人集まったようです。その20人が火種になって、全国にどんどん拡大していったのです」
確かに、野党共闘が進んでいない状況で選挙に突入すれば、悲惨な結果が待っているだろう。市民主導は欠かせない。
形勢を一発逆転させる1人区の作戦とは?
「99%の“普通の人々”のための経済政策を、無党派市民を中心に話し合い、練り上げていく。その経済政策で合意した無党派市民が、来年夏の参議院選挙で大量に立候補するのです」(同)
参議院選挙でも小選挙区が多いため、野党候補と重なって候補乱立になる懸念はないのか。
「参議院は1人区が32あります。この32選挙区すべての反与党候補を、無党派市民候補(無所属候補)1人に統一するのです。野党は公認候補を出さず、無党派市民候補を支持する方式です。その前提として、無所属は政策合意しています。野党も政策に合意していれば支持できるのではないでしょうか」(同)
確かに、冒頭に挙げた5大経済政策で合意してさえいれば、野党が無党派市民を支持することも可能だ。場合によっては3つの政策合意でもいいかもしれない。
これは、結果的に野党共闘がしやすくなるのではないか。表現を変えると、野党同士の直接交渉で統一候補擁立が難航しても、無所属候補を接着剤として結果的に野党が共闘していることになる。
「また3人区(5選挙区)では、無党派市民候補1人、野党第一党1人の候補者を出し、2人当選を目指します」(同)
昨年の総選挙前には、民進党の分裂と希望の党旗揚げで野党は分断されたが、現在は国民民主党も創立されており、今後も似たような状況になりかねない。それならば、32選挙区ある1人区すべての候補を無党派市民だけにする戦術は有効だろう。そのくらい大胆な発想を持たなければ、大きな結果は期待できない。
黒川氏の念頭にある無所属候補とは、永田町政治の外にいる「無党派市民」が立候補することが中心だ。しかし、これに政党の公認を受けない元国会議員をあて、無所属候補として出馬することも実現可能な方法であろう。
無所属候補が当選したあかつきには、統一会派を結成する。もともと、政策合意し、野党も支持することを前提としているから、既存野党とも連携可能だ。そのうえで、来る総選挙に備えるという戦略・戦術である。
これまでの話は来夏の参議院選挙/を想定したものだ。情勢によっては総選挙が先に行われることもあり得るが、その場合でも来夏の参院選は必ず実施されるのだから、実行したら大きな転換のきっかけになるかもしれない。
誰もが面白いと思えるものであれば、多くの人が集まり、また投票率も上がるだろう。
(文=林克明/ジャーナリスト)