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片田珠美「精神科女医のたわごと」

小池百合子氏、近づく女性首相の座…都議選善戦で「マニピュレーター」「ゲミュートローゼ」ぶり発揮

文=片田珠美/精神科医
小池百合子氏、近づく女性首相の座…都議選善戦で「マニピュレーター」「ゲミュートローゼ」ぶり発揮の画像1
東京都のHPより

 東京都議選の投開票が7月4日に行われ、小池百合子東京都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は大方の予想を覆して善戦し、31議席を獲得した。それに対して、50議席以上の大勝と予測されていた自民党は辛うじて第一党となったものの、33議席にとどまり、公明党とあわせても過半数(64議席)に届かなかった。

 都民ファーストが劣勢を覆した理由として、

「小池氏の入院によって、同情票が都民ファーストに流れた」

「麻生太郎副総理兼財務相が入院した小池氏を『自分でまいた種でしょうが』などと揶揄したことで、有権者の反感を買った」

「小池氏が最終日に都民ファーストの候補者の応援に入ったことが、やはり効果があった」

など、さまざまな説が挙げられている。

 いずれにせよ、今回の都議選で小池氏は自らの影響力を見せつけ、存在感が高まった。一方、自民党内には菅義偉首相では次の衆院選を戦えないのではないかと危惧する声もあると聞く。

 また、小池氏と自民党の二階俊博幹事長との間に<都議選で都民ファーストを応援しない><応援するなら自公も平等に>という“密約”があったから、公示日の3日前に過労で入院したのだという噂も流れた。しかも、この“密約”は、今年秋にも行われる衆院選で小池氏が国政に復帰することを狙って結ばれたという説までまことしやかにささやかれている。

 小池氏が国政復帰を狙っているとすれば、きな臭い話だが、さもありなんと思う。なぜかといえば、小池氏は天才的な「マニピュレーター(manipulator)」のように見えるからだ。「マニピュレーター」とは、文字通りマニピュレート(manipulate)する人であり、他人を自分の思い通りに操ろうとする。

 優れた「マニピュレーター」であることは、ときには世論を操作することも必要な政治家として大切な資質であり、小池氏はこの資質に恵まれている。小池氏は東京五輪・パラリンピック開催や新型コロナウイルス対応でたしかに大変だったろうとは思うが、入院によって有権者の同情を得られたことも、選挙戦最終日の前日まで応援演説をせずにすんだことも事実である。もし、これが計算されたものであれば、あっぱれと脱帽するしかなく、この手の成功体験が小池氏には実に多い。だからこそ、「緑のたぬき」と呼ばれるのだろう。

小池氏は「スポットライト症候群」かつ「ゲミュートローゼ」

 そのうえ、小池氏は自己顕示欲が強く、常に注目を浴びていないと気がすまない「スポットライト症候群」のように見える。このタイプは、自分が注目を浴びるにはどうすればいいのかを第一に考えて行動する。

 だから、五輪開催都市の首長として世界中からスポットライトを浴びたら、その後は東京都知事でいる必要はなくなるだろう。五輪終了後は、日本初の女性宰相としてスポットライトを浴びるために並々ならぬ努力を積み重ねる可能性が高い。小池氏の場合、政治家としての成功に「スポットライト症候群」の資質が貢献したことは否定しがたく、それを生かしてさらに高みを目指すのではないだろうか。

 おまけに、小池氏は自分が脚光を浴びるためなら、仲間や同士を切り捨てることなどものともしない。2017年に希望の党を設立した際の「排除」発言に象徴されるように、自分にとって利益にならないと思えば、平然と切り捨てる。

 その点では、罪悪感も良心の呵責も覚えない「ゲミュートローゼ」のように見える。「ゲミュート」とは、思いやりや同情、憐憫の情などを意味するドイツ語であり、それが欠如した人を、ドイツの精神科医クルト・シュナイダーは「ゲミュートローゼ」と呼んだ。「ゲミュートローゼ」は反省も後悔もせず、良心がとがめることもない。

 そう聞くととんでもない人のようだが、実は政治家や実業家、芸術家などの社会的成功者にも少なくない。意思が非常に強く、他人の屍を越えてすら進むことができるからこそ、成功するという側面もある。小池氏のこれまでの成功に、「ゲミュートローゼ」であることがいい意味でも悪い意味でも貢献していることは否定しがたい。

 いずれにせよ、今後も小池氏の動向から目が離せない。そう思うこと自体、小池氏の「スポットライト症候群」の欲望を満たすことに寄与しているような気がしてしゃくだが、それだけ天才的な「マニピュレーター」ということでもある。

(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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