4日投開票され、“勝者なき結果”と終わった東京都議選。自民・公明両党と小池百合子知事が特別顧問を務める都民ファーストの会(都民ファ)が都議会の主導権をめぐって雌雄を決しようとした結果、どちらも勝利を口にできる結末にはならなった。惨敗予測が流れていた都民ファは31議席を獲得したものの、選挙前の46議席から15議席減で第2党になった。一方、議会過半数を押さえるほどの大勝利を選挙戦終盤まで確信していた自公は23議席から10議席増の33議席獲得にとどまった。
報道各社は小池都知事が都議選告示前の6月22日に“疲労のため入院し”、選挙最終日の7月3日に電撃復帰して都民ファ候補の応援に回ったことが“無党派層や、候補者を決めかねていた有権者を引き寄せた”などと分析している。
だが日刊スポーツは6日、記事『二階幹事長「物語だよ」東京都議選での“小池マジック”報道を批判的に分析』で次のように二階俊博自民党幹事長の談話を伝える。
「物語だよ。小池さんが出てきたからどうのこうのいうのは物語。そういう物語を書こうとしている」
今回都議選の投票率は前回を8.89ポイント下回る42.39%。二階幹事長の見立てがどうあれ、過去2番目に低い数値で都民の政治全般に対する絶望感がにじみ出る結果だった。そのうえで、都議選の投票行動の決め手はなんだったのか。20~60代の有権者5人に話を聞いた。
渋谷区20代会社員女性「小池氏のパフォーマンに同情はない」
前回都議選は棄権。今回の投票先は都民ファだった。主要支持政党はないという。
「ニュースで“小池さんが過労で入院していたから同情票が集まった”という話を見て、そうなのかなとずっと疑問でした。選挙戦の終盤でいきなり現れて、まるで“悲劇のヒロイン”のようにふるまうとか……。五輪開会を控えた大事な時期なので、ちゃんと体調治したほうが良いのではないですか。そうした政治パフォーマンスを好ましく思っていないので。かといって、一連の東京オリンピックに関する対応や新型コロナウイルス感染症対策で自民党にも好感は抱いていません。
都民ファの候補者の龍円愛梨さんはテレビ朝日のアナウンサー時代から見たことがある人だし、もっと女性議員に活躍してほしいと思っただけです。消去法の結果です」
豊島区30代自営業男性「安倍晋三前首相の発言で投票棄権」
前回都議選の投票先は公明党。今回は投票に行かなかった。主要支持政党は公明党。創価学会の会員でもある。
「飲食店を経営しているので、一連のコロナ禍での小池知事の施策には、かなり不満がありました。うちは両親の代から学会員です。今回は自民党候補者を応援するようもとめられていましたが、今回はダメだな、と。
そう思うきっかけになったのは、投票日前日くらいに月刊誌『Hanada』(飛鳥新社)に掲載された対談で、安倍晋三前首相が東京五輪に対して『歴史認識などで一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対している』と言ったというニュースですね。安倍さんの真意がどうあれ、一連の報道を見る限り自民党の上層部は『五輪に対して消極的賛成をしている人たち』のことがまったくわかっていないのではないかと疑問に思いました。極めてマイナスです。
五輪に対して、積極的に賛成している人、逆に反対している人ってそんなにいないと思うんですよ。『自分の商売相手が五輪のプロジェクトに絡んでいるし、それぞれの生業もあるから五輪をやったほうがいいんじゃないか』とか『アスリートのことを思えば開催したほうが良いと思うけど、自分がコロナに罹ったら不安だな』とかそんな感じじゃないですか。ところが安倍さんの主張で、逆に五輪反対派が勢いづく結果になってしまったと思います。それに『しょうがないから賛成している人』たちも『反日』と言われているような気がして反発を招いたんじゃないですかね。
あのタイミングで、あの内容を公に出すという安倍さんの政治的なセンスのなさにがっかりしました。五輪が終わってから、ご自分の好きなように主張をすれば良いのに。とにかく今の自民党と組んでいては公明党も道連れになる。それではダメだと思いました」
目黒区40代会社員女性「小池氏にも思いつきの自民党にも嫌悪」
前回都議選では都民ファに投票。今回は生まれてはじめて立憲民主党に投票した。支持政党は特にないという。
「一言いうのなら、主要政党もマスコミもまったく有権者の気持ちを汲んでいない主張しかしていませんよね。投票行かないで済まそうかと思いましたが、子どもに『選挙なんでしょ?』と言われたので、家族で行くことになりました。
小池さんは自分で盛り上げた都民ファに対して距離を置いて、自民党と接触し始めるなど、正直、胡散臭いなとしか思っていません。政府与党は、コロナワクチンの職域接種中断騒動を見てもわかる通り、その場の思いつきやノリで政策を展開しているようにしか見えません。ニュースを見ている限り、野党は野党で国会で反対のための反対に明け暮れているようにしか見えませんし……。今回はコロナ禍での『孤育て』に関して、理解していそうな立憲の西崎翔氏に投票しました。党というより、候補者個人の政策を見た結果です」
太田区50代会社員男性「自民党都連の楽観視に疑問」
前回選挙の投票先は自民党。今回も自民党候補者に票を投じた。支持政党は自民党。
「前から自民党都連の楽観視がずっと報じられていましたが、選挙戦後半くらいから明らかに自民党支持派の友人も『どこ入れる?』と聞いても微妙な返答で、ちゃんと情勢分析できているのかな、と思っていました。確かに都民ファの支持は落ちていたのかもしれませんけれど、その受け皿に自民党がなるというのは楽観論に過ぎなかったのではないでしょうか。組織がちゃんと動いていたのかも、非常に疑問です」
北区60代無職女性「低下した投票率こそが明確な民意」
前回選挙では自民党。今回は投票を棄権した。支持政党はない。
「投票率、低かったんでしょう?それが民意でしょう。昨年からコロナで他の人の迷惑にならないように買い物も控えて、自宅に引きこもっています。どこの政党に投じても、もうこの状況が良くなるとは思えません。だから、今回は投票を取り止めました」
(文・構成=編集部)