【富田林署・逃走】大阪府警、不祥事続出の内部実態…被害届取り下げ強制、交通違反もみ消し
もっとも、大和川病院では、劣悪医療に加えて、精神保健福祉法に違反する人権侵害や暴力支配が横行していた。看護師やボス患者の暴行による入院患者の死亡事件も起きている。そのせいで評判が悪かったからこそ、患者確保のために「営業活動」に精を出していたともいえる。
ちなみに、大和川病院の実質的な経営者だった安田基隆・安田病院長は、診療報酬をだまし取った詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、大和川病院は強制的な廃院・解散処分を受けた(安田氏は1審・2審で実刑判決を受け、上告中に病死)。
法律に違反するようなことをしていても、患者を迎えに来てくれる病院のほうが、警官がパトカーで患者を病院まで連れて行く面倒なことをせずにすむので、「良かった」ということだろうか。
このように面倒なことを嫌がる傾向は、他の面でも現れているように見える。たとえば、ストーカーに悩まされたり、レイプされたりした女性が被害届を出そうとすると、警官から取り下げるように説得されたという報道を聞くと、「面倒くさいことは嫌なんだろうなあ」と思わずにはいられない。
今回の逃走事件も、接見室の扉には開くとブザーが鳴る装置が設置されていたが、富田林署が装置の電池を抜いていたことが一因のようだ。「接見終了時に弁護士が署員に知らせることが多いため不要」というのが理由らしいが、本当は接見室の扉が開くたびにブザーが鳴ると、うるさくて面倒だからではないかと疑いたくなる。
駆け出しの頃、先輩から「精神科医は警察と仲良くしなければ、仕事ができない」と言われたことがある。たしかに、通院中の患者が「FBIに追いかけられています」と訴えて警察に駈け込んだと連絡をいただいたり、無断離院した入院患者の捜索願を警察に出しに行ったりしたときに、大変お世話になった。誠実に対応してくださった警官を思い出して、「真面目にがんばっている警官もいるのだから、十把一絡げに大阪府警の悪口を言うのはやめよう」と自分に言い聞かせている。
それでも、今回の逃走事件のようなお粗末な不祥事が続くと、批判せずにはいられない。大阪府民の安全を守るために、襟を正してがんばっていただきたい。
(文=片田珠美/精神科医)