女子体操でリオデジャネイロ五輪代表の宮川紗江選手(18)からパワハラを訴えられた日本体操協会の塚原光男副会長と、妻の千恵子強化本部長。全面反論の文面を8月31日に公表したかと思いきや、2日後に突然、謝罪文を公表した。目前の世界選手権(10月・ドーハ)、開催まで2年を切った東京五輪を前に大混乱の体操界をどうみているのか。ソウル、バルセロナ両五輪のメダリスト池谷幸雄氏(47)に話を聞いた。
――塚原夫婦の態度を一変させた謝罪文発表には驚きました。
池谷幸雄氏(以下、池谷) 18歳の宮川さんが選手生命を奪われるかもしれないなか、勇気を出して記者会見しているのに、塚原夫婦が紙ですませるのはおかしい。記者会見で顔を出して自分の言葉で話すべきです。弁護士がつくったとしか思えない文面は夫婦の本音ではなく、それまでにメディアに語っていた「全部嘘」とか「黙ってないわよ」などの言葉に表れる対決姿勢が本音に見えます。
謝罪文のなかで驚くのは、文面自体が宮川選手を傷つけるかもしれない、と平気で書いてること。それなら、どうして出すのか。さらに、間近の代表合宿や世界選手権のことを書いている。宮川選手は泣く泣くそれらを辞退したのです。それを謝罪文にまで載せられてどんなにショックか。
要は、千恵子氏はドーハに行く気満々なんですよ。自分だけは大会に参加する、と言ってるようなものです。こんなことを書いていれば、余計傷つけるだけです。報道で雲行きが悪いことを感じて、早く謝ってしまって世界選手権に自分が行きたいのでしょう。でも、謝罪文は選手の朝日生命体操クラブへの強引な引き抜きなど、肝心なパワハラを認めていません。
――今からでも宮川選手は世界選手権に参加できないのですか。
池谷 ぜひ、出てもらいたいし、今からでもできなくはないですが、千恵子氏が行くのなら無理です。告発相手の権力者のいるところで、宮川選手は演技などできないでしょう。体操協会は、千恵子氏の帯同を認めるべきではないでしょう。