女子体操でリオデジャネイロ五輪代表の宮川紗江選手が、日本体操協会によるパワハラを告発したことを受け、すでに体操協会は調査のため第三者委員会を立ち上げ、当初は9月中をメドに結果をまとめるとしていたが、10日、体操協会は10月にずれ込む見通しだと発表した。
その第三者委の人選が、予想外の物議を醸している。パワハラを行ったと訴えられている体操協会副会長の塚原光男氏と、妻で女子強化本部長の塚原千恵子氏は、朝日生命が協賛する朝日生命体操クラブを運営しているが、第三者委の岩井重一委員長が、朝日生命が株主である株式会社ブロードリンクの顧問弁護士という立場であることが判明したのだ(10日付けで辞任を発表)。これを受けて、少なからず朝日生命に関係する人物が第三者委に選ばれることで、調査の公平性が保たれないのではないかという指摘も出ている。
宮川選手の代理人弁護士は10日、岩井委員長は利害関係があるとして、第三者委のメンバー変更を求める文書を体操協会に提出しているが、この人選は問題ないのであろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏は次のように解説する。
山岸氏の解説コメント
企業などで不祥事が起きた際に調査などを行う「第三者委員会」については、その委員の構成の仕方や報告書の内容などについて、日弁連がその指針を出しています。
このなかで、「企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない」という規定があります。
今回、岩井弁護士は、(1)「塚原夫妻が指導する体操クラブ」を(2)「運営する朝日生命」が(3)「株式を保有する株式会社ブロードリンク」が(4)「依頼している顧問弁護士」とのことです。今回の第三者委の調査対象は「日本体操協会」における“不祥事”であり、ブロードリンクや朝日生命や塚原夫妻そのものではありませんので、上記の日弁連の指針に反するということにはなりません。
実際に、岩井弁護士が「第三者委員会」の委員長として中立性を保てるかどうかを考えるに、「ブロードリンクの顧問弁護士として朝日生命が同社の株主であること」を知っていたとしても、ブロードリンクが株主である朝日生命に対し、“上の立場”から何かモノを言える立場にあるわけではありませんので(逆のパターン、すなわち「ブロードリンクが朝日生命の株主」であったら、何かモノを言えたかもしれませんが)、現実問題として、朝日生命に対するバイアスがはたらく可能性はほぼゼロでしょう。