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杉江弘「機長の目」

自衛隊がオスプレイ導入、首都圏で墜落事故の危険…政治主導の配備で隊員の命も危ない

文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長
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 オスプレイでも仮に2基あるエンジンが全て故障すれば、このオートローテーションの技術を使い墜落時の被害を少なくしなければならないのだが、果たして十分に機能するのか疑問がわく。

 もともと、オスプレイのローターは構造上大きくできず短いため、それをカバーするために回転数を高くしている。そのため降下のときにはダウンウォッシュを強く発生させ、それが自機とほかの編隊機に乱気流となって影響するという特徴があるのだが、この短いローターはオートローテーション時にも十分な揚力を得られないという弱点が指摘されている。

オートローテーション操縦は本当に十分なのか

 12年9月に沖縄県知事への回答というかたちで防衛大臣が、次のような主旨の発表を行った。

「エンジン出力喪失時の処置は滑空とオートローテーションの2つがあり、適切な前進速度と降下率を得るように飛行する。しかし回転翼機であってもオスプレイであっても、低高度におけるホバリングのような適切な前進速度と降下率を得ることができない高度及び速度領域が存在する。なおオスプレイについては両エンジンが同時に出力を喪失する事態は一度も発生していなく、オートローテーションを求められる場面はほとんど想定されていない」

 しかし先に述べたローターの大きさからくる非常時の落下速度は、かなり大きくならざるを得ないのは明らかで、滑走路など不時着時に適した場所がないと二次被害を十分に避けることは難しいだろう。そもそも、オスプレイは軍用機であるため民間のヘリ等に求められているオートローテーション等の厳しい耐空性基準は適用されず、日本の航空法で定めた耐空証明がなくても飛行可能である。

オスプレイは日本に必要か?

 米軍に加え日本にも18年度から導入が始まり、自衛隊としてのオスプレイは当面17機となる予定である。しかし自衛隊では、国土の狭い日本では既存のヘリ部隊で十分であり、実効性もオスプレイより高いという意見が強かった。オスプレイは敵地に乗り込んで作戦を展開させるのが主目的で、そのために一般の航空機のように航続距離も長い。米軍が海兵隊の任務遂行のために開発したのもその理由からだ。

 しかし、専守防衛を任務とする自衛隊の任務からいって不必要な輸送機といえなくもない。自衛隊の武器類はユーザーでもある自衛隊が選定する。具体的には陸海空自衛隊を統括する防衛省総合幕僚監部が策定する「統合長期防衛戦略」をたたき台に、陸海空の各幕僚監部が武力攻撃事態を想定して武器類の導入を要求し、予算配分される。

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

1946年、愛知県生まれ。1969年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本航空に入社。DC-8、B747、エンブラエルE170などに乗務する。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。B747の飛行時間では世界一の1万4051(機長として1万2007)時間を記録し、2011年10月の退役までの総飛行時間(全ての機種)は2万1000時間を超える。安全推進部調査役時代には同社の重要な安全運航のポリシーの立案、推進に従事した。現在は航空問題(最近ではLCCの安全性)について解説、啓発活動を行っている。また海外での生活体験を基に日本と外国の文化の違いを解説し、日本と日本人の将来のあるべき姿などにも一石を投じている。日本エッセイスト・クラブ会員。著書多数。近著に『航空運賃の歴史と現況』(戎光祥出版)がある。
Hiroshi Sugie Official Site

Twitter:@CaptainSugie

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