ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~TOKYO 2020

東京五輪開催年、インバウンド客が減少の可能性…中国依存のいびつな「観光大国」の正体


 おそらく我が国でも、五輪後もインバウンド需要は増え続けていくだろうと期待できる。しかし、その水準は、かつてのトレンドや世界の趨勢と照らすと、年率でせいぜい4~5%程度。バブルが弾けるとまではいわないが、五輪効果による上乗せ部分は消えてなくなる。

 それ以上に忘れてはならないのは、マーケットが拡大しているからといって、個々のビジネスが成長するとは限らないということである。五輪後もインバウンド客を増やし続けるには、厳しい国際競争の中で勝ち残るための努力が不可欠だ。それを成し遂げた好例がイギリスだろう。あれよあれよという間に急増したインバウンド需要に浮かれ気分の我が国が、悪しき見本とならないことを祈るばかりだ。

中国人の「爆買い」は「爆通販」へ

 我が国のインバウンド観光成長を象徴した感のある「爆買い」は、今やすっかり落ち着いたようだ。

「爆買い」が流行語大賞となった2015年のインバウンド客1人当たりの観光消費額は17万6000円。中国人に限ると、30万円に迫る勢いを示していた。2017年の中国人1人あたりの観光消費額は23万円にまで下がり、これと対をなすように、全体の平均値も15万4000円に低下している(図表2)。


 まさに、中国人がくしゃみをすれば我が国全体のインバウンド観光が風邪をひくという状態にある。それでも、中国人の観光消費額は4割を占める。インバウンド需要の圧倒的な部分を、中国人の活発な消費に依存している構造に変化はない。

 考えてみれば、「爆買い」はかつて日本人の専売特許だった。いまから30年前のバブル経済華やかかりし頃、日本人観光客は欧米の免税店に押し寄せ、ブランド品を買い漁っていた。

 今も日本人のブランド好きはまったく変わっていない。では、なぜ日本人は「爆買い」しなくなったのか。主要ブランドが国内に直営店舗を構え、「輸入総代理店」制度の下で生じていた内外価格差が縮小したこと。流行落ちの商品ならアウトレットショップで安価で購入できるようになったこと。「爆買い」は流通体制の遅れによって生じた泡沫にすぎなかったことを、私たちは身をもって体験している。

 加えていえば、中国人消費の主対象はブランド品ではなく日用品だ。その傾向は、近年ますます強まっているという。だとしたら、わざわざ訪日するまでもなく、ネット通販で用が足りる。今、「爆買い」に代わって「爆通販」が注目を集めているのも、むべなるかなといえるだろう。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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