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ストーカー犯罪、メール送信も規制対象に…“猛アタック”は、どこまで許されるのか?

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ストーカー犯罪、メール送信も規制対象に…“猛アタック”は、どこまで許されるのか?の画像1「Thinkstock」より
 弁護士法人アヴァンセリーガルグループのパートナー弁護士で、企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、話題のテーマや身近な紛争事案などについて、わかりやすく解説します。

 6月、会期満了により終了した第183回通常国会では、“アベノミクス”と呼ばれる経済対策・効果が大きく取り上げられていましたが、実はその陰で、私たちの生活にとって大切な法律がいくつか改正されています。中でも重要なのがいわゆる「ストーカー規制法」の改正で、7月3日付で公布、発効され、本日23日から一部が施行されます。

●ストーカー規制法の概要

 ストーカー規制法はもともと、平成10年10月、埼玉県桶川市で、女子大生が元交際相手らにつきまとわれた上で殺害された「桶川ストーカー殺人事件」を契機に、国会議員からの立法提案によって制定された法律です。

 この法律は、「告白したけど付き合ってもらえない」「付き合っていたけどフラれた」ことなどによる“逆恨み”的な感情を満たすために、

 ・勤務先や住居に押し掛けたり、付近で見張っていたり、また、「見張っていること」を思わせる言動を行う
 ・面会を強要する
 ・無言電話をかけたり、「死ね」といった内容のファックスを送信する
 ・動物の死体や汚れた物、性的な物を送り付ける
 ・「この女は性行為が大好きです」といった紙を張り付ける

 などの「ストーカー行為」を繰り返す者に対し、警察等から「警告」を出してもらったり、このような行動に対し「禁止命令」を出してもらったりすることができる法律です。

 警視庁の発表では、「警告」を出された加害者は、約90%がストーカー行為をやめているとのことですが、平成22年12月には、長崎県西海市で女性の母などが元交際相手に殺害される事件が発生したり(長崎ストーカー殺人事件)、平成24年11月には、神奈川県逗子市で女性が元交際相手に殺害される(逗子ストーカー殺人事件)など、重大事件は後を絶ちません。

 また、携帯電話機能が発展した今日において、相手に自分の意思を伝えるのに最も簡単な方法である「電子メール」がストーカー規制の対象になっていなかったため、逗子ストーカー殺人事件では、被害者の女性に犯人から大量のメールが送信されていたのに警察が取り締まりをできない状況にありました。

 そこで、今回の改正で、「電子メール」の送信を繰り返す行為も規制の対象としたわけです。

●“しつこく”メールを送信しただけで逮捕されるのか?

 しかし、好意を抱く相手にメールを送るのは、誰だってしそうなことです。時には想いを伝えるため、毎日メールを送ることだってあるかもしれません。

 実際、“猛アタック”の結果、最初は自分を避ける態度をみせていた相手の女性が、ついには想いに応えてくれたというケースだってなきにしもあらずです(日本には、古来より「嫌よ嫌よも好きのうち」といった不思議なことわざもあります)。
  
 では、どこまでの“猛アタック”が許されるのでしょうか?

 この問題は、「ストーカー行為」が刑罰をもって禁止されるものである以上、厳格かつ明確に分別されなければなりません。

 ところが、改正法は、「拒まれたにもかかわらず、連続して、電子メールを送信した場合」としか規定していません。これでは、“猛アタック”がどこまで許され、どこから規制されるかを判断することはできません。

 例えば、「結婚してくれ!」を繰り返すメールは許されるのか? 女性が好みそうなかわいい絵文字つきのメールでも、100回以上送信することは許されないのか? ビルの屋上の写真を添付して「付き合ってくれないなら飛び降りる」とメールすることはどうなのか?

 結局、ストーカー規制法が規制する他の行為(上記参照)と比べてみて、「相手が嫌がる程度が同じレベル」のメール送信が規制されるということになる、と考えるしかないようです。

 なお、今回の改正では、通報を受けた警察がストーカーに「警告」を行わない、という判断をした場合、その理由を通知することが義務付けられました。また、上記の「警告」や「禁止命令」について、これまでは被害者の住所を管轄する警察等しか対応しておりませんでしたが、ストーカーの住所や、被害にあった場所を管轄する警察等でも対応することが可能となりました。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ・パートナー弁護士)

弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、大宮、大阪に拠点を持つ、法律のスペシャリスト弁護士法人。特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。また、無料法律相談も常時受け付けている。

BusinessJournal編集部

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