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アイスホッケーの男子は長野五輪の開催国特権出場の後、一度も五輪の出場権を得ていない。女子と違い体当たりが認められており、体格の劣る日本人には厳しい。「五輪大好き日本人」のなかでの不参加続きでは、人気も低迷する。アジアリーグも優勝決定の時でなければ記事にならず、全国紙はほとんどスコアだけという状態だ。かつてはNHKもBS放送でNHL(北米アイスホッケーリーグ)を中継していたが、現在ではそれもない。
北海道でのアイスホッケー人気衰退の大きな要因とされるのが、サッカー、そして野球の台頭だ。北海道はかつて「野球後進国」でプロ野球は巨人戦の中継しかなく、大半が巨人ファンだったが、日本ハムファイターズが本拠地を札幌ドームに移し、野球人気が高まった。コンサドーレ札幌の発足でサッカー人気も同様。かつては釧路や苫小牧の少年たちのスポーツといえばアイスホッケーだったが、徐々に野球やサッカーがそれに取って代わっていく。
日本リーグ選手の8割を輩出していた両市は寒冷地だが雪が少なく、冬は校庭の一角に水を撒けばリンクに早変わり、子供たちもそこで練習していた。今はそんな光景も少ないという。釧路工業高校などとインターハイ決勝を争っていた駒澤大付属苫小牧高校も以前はアイスホッケーで知られる高校だったが、近年は米大リーグ投手の田中将大を輩出し、野球で有名になってしまった。
クレインズの24人の選手の引き受け先は未定だ。日本製紙は地元にとって羨ましい就職先でもあり、アイスホッケーの上手な少年を持つ親たちも選手にしようと必死だった。もうそんな光景もない。1980年代の釧路赴任中、十条製紙が日本リーグでほとんど全敗していた王子製紙に引き分けた大激戦(5対5)を見て感動し、一時はアイスホッケー担当記者にまでなった筆者には寂しい限りである。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)
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