もうひとつ、一般病院数をみてみよう。
「人口10万人当たり一般病院数」(厚労省の医療施設調査=2016年)によると、全国平均は5.8。多い順に、高知県16.5、鹿児島県13.1、徳島県12.9、大分県11.4、佐賀県・宮崎県11.2。病院数も四国、九州が上位を独占だ。
病院数が少ないのは、神奈川県3.2、滋賀県3.5、愛知県3.8、埼玉県・千葉県4.0と続く。東京都も4.4で平均以下だ。人口の多い大都市圏や周辺部は、10万人当たりの病院数は少なくなる。
10万人あたりの数値となると、どうしても高知県のように人口の少ない県が優位になりがちである。そこで、より実態に即すために医師の労働時間などを加味した「医師偏在指標」をつくったのだろう。
5年後の医師不足、診療科別では内科が1万4468人でトップ
厚労省は医師不足の推計値について、診療科別のデータも公表した。24年、30年、36年の3段階の数値があるが、ここではもっとも近い5年後、24年の不足数をみてみよう。主な診療科別の数値は次の通り。
診療科、24年の必要医師数(A)、(A)と16年の医師数との差
内科、12万7446人、1万4468人
小児科、1万7813人、1227人
皮膚科、7999人、-686人
精神科、1万4919人、-772人
外科、3万4916人、5831人
整形外科、2万4374人、2345人
産婦人科、1万3624人、992人
眼科、1万2336人、-388人
耳鼻咽喉科、8621人、-554人
泌尿器科、8599人、1173人
脳神経外科、9789人、2077人
もっとも医師不足となるのが内科で、次いで外科、整形外科の順となっている。逆に、精神科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科の4科は現時点で5年後の必要医師数を超えている。なお、このデータに歯科医は入っていない。
都道府県別、診療科別の医師不足の実態をみてきたが、目標年度の36年においても医師不足解消のめどは立っていないのが現状だ。不足の解消に何が必要なのだろうか。
地方における医師不足、医師偏在の原因として、「研修医の都市部への集中」「都市部での開業医の増加」「診療科別の偏在」などが指摘されている。私立医大を中心とした入試不正問題で、入試が医局就職のステップになっているといった指摘もあった。大学病院による青田買いのようなことを放置していたら、問題解決にはほど遠い。過疎地域勤務医へのインセンティブ、医師が充足している地域から医師不足地域への派遣制度などの対策を早急に打ち立てていくべきだろう。
一方で、患者側にも問題はないのか。不要な診療、救急要請などで医療現場の負担を重くしている面も見受けられる。医師の過重労働につながる問題だ。
今回の「医師偏在指標」で、状況の可視化はできた。必要なのは、医師不足や偏在を解消するための効果的な具体策である。国は一日も早く、国民にわかりやすいかたちで提示すべきだ。
(文=山田 稔/ジャーナリスト)