7月10日投開票が想定されている参議院選挙で、日本維新の会と国民民主党が京都選挙区と静岡選挙区で「相互推薦」すると4月20日に発表し、京都政界に衝撃が走った。京都では立憲民主党前幹事長の福山哲郎参院議員(60)が改選を迎える。立憲は国民に選挙協力を求めてきたが、京都選出の国民の前原誠司選対委員長(60)は維新新人で大阪ガス社員の楠井祐子氏(54)の支援に回る。維新との連携を選択し、立憲にノーを突き付けた形となった。
改選定数2の京都では、すでに自民、立憲、維新、共産が候補者を擁立。毎回指定席の自民は現職が引退し、新人が立候補する。3年前の参院選で議席を維持した共産も京都では底力がある。そこへ維新が殴り込みをかける。
これまで「大阪ローカル政党」と見られてきた維新だが、昨秋の衆院選で兵庫の小選挙区で1人当選、京都で1人が比例復活し、いよいよ関西全体へと勢力を広げつつある。4月10日投開票だった京都府議会の補欠選挙では、参院選同様の構図で自民、立憲、維新、共産の4人が戦い、維新が勝利、立憲は最下位だった。4月28日には維新と国民の相互推薦に関する合意文書がいったんは白紙撤回となったものの、参院選で国民の前原氏が維新を支援すれば、福山氏は落選の危機となる。
維新と国民の相互推薦発表の記者会見の場で、前原氏は「福山さんを排除するとか敵対する気持ちはまったくない。定数2の選挙区なので福山さんも当選に向けてがんばってほしい」と話したが本音は違う。
「維新と国民は、すでに昨年末には参院選の京都選挙区で連携して戦う方向で調整していた。先頭に立って動いていたのは、維新ではなく、むしろ前原氏。目ぼしい候補者に声を掛け、『維新の看板で戦い、国民が推薦し、自らが全面的に支援する』と口説いていたといいます。その時点で、前原氏は福山氏を落とす気なのだな、と思ったものです」(地元メディア関係者)
前原氏と福山氏はともに松下政経塾出身。民主党時代は前原グループと呼ばれた「凌雲会」にともに所属してもいた。しかし、2017年の衆院選時の「希望の党」騒動で、福山氏は前原氏の元を去り、枝野幸男衆院議員(57)と立憲を立ち上げた。
以来、前原氏と福山氏の関係は冷え込み、3年前の参院選でも一旦は立憲と国民の双方が候補者を擁立。結局、前原氏が譲るかたちで、立憲の候補に一本化されたものの、結果は自民と共産の後塵を拝し、立憲候補は敗北した。そうしたギクシャクした関係が、ここにきて表面化したといえる。
小川淳也氏と玉木雄一郎氏
立憲民主党の泉健太代表(47)も京都選出だ。福山氏の元秘書でもある。立憲は代表のお膝下で前幹事長を落選させるようなことになれば、目も当てられない。
近親憎悪のようなバトルは香川県でも起きている。改選定数1の香川では、6年前も3年前も野党共闘の候補者一本化が成立してきたが、今回は自民現職に対し、立憲、国民、共産、そして維新がそれぞれ候補者を擁立。特に、立憲と国民は張り合うかのように、同じ日(3月28日)に候補者を発表した。
立憲は小川淳也政調会長(51)が、国民は玉木雄一郎代表(53)が主導。ともに香川選出の衆院議員である。地元では1人区なのだから立憲と国民で選挙協力すべきとの声もあったが、かき消された。国民が2022年度予算案に賛成したことから、小川氏が国民を「与党の補完勢力」と批判すれば、玉木氏は「(国民は)何でも批判するオールド野党ではなく、政策本位で与党と対峙する新しい野党だ」と反論していがみ合っている。
「玉木氏と小川氏は、県内トップの進学校である県立高松高校の先輩後輩。玉木氏が年上で、ともに東大法学部卒後、玉木氏は大蔵省(現財務省)に、小川氏は自治省(現総務省)に入った。一方、政治家としては小川氏が先輩。小川氏は2005年に初当選、玉木氏は2009年です。
しかし、先に出世したのは玉木氏で、党の代表に就いたうえ、ずっと小選挙区で当選しつづけている。小川氏はほとんど比例復活で、昨年の衆院選でようやく自民の平井卓也前デジタル担当相を破って小選挙区で当選した。そんな2人ですから、同じ政党にいても微妙な距離感だった。別々の党になれば、早晩対立するだろうことは想像できました」(野党関係者)
立憲と国民は、参院選での略称の届け出でも揃って「民主党」を譲らず、このままなら昨年の衆院選同様、有権者の混乱を招くのは必至だ。近親憎悪で反目し、過去の栄光にすがる。これでは、立憲も国民も世論の支持は広がりようがない。
(文=Business Journal編集部)