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長谷十三「言わぬが花、をあえて言う。」

自民党が旧統一教会を絶対に解散させられない理由…数多の宗教団体が「票田」

文=長谷十三
統一教会(世界平和統一家庭連合)の本部(「Wikipedia」より)
統一教会(世界平和統一家庭連合)の本部(「Wikipedia」より)

「旧統一教会」を日本から追放しようというムーブメントが盛り上がっている。

 今や子どものみならず大人にとっても憧れの存在である、論破王・ひろゆき氏が、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への批判ツイートを連発、さらにカルト宗教規制法案を唱えたことで、ネット上では「政治家になってほしい」「マスコミよりも頼りになる」などとヒーロー扱いされているのだ。

 もちろん、こういう「世論」は一部のマスコミも敏感に察知する。多くのワイドショーの旧統一教会批判がトーンダウンをするなかで、『情報ライブ ミヤネ屋』(よみうりテレビ)は多くの時間を割いて旧統一教会批判を行っていることで、SNSには「#ミヤネ屋がんばれ」「#ミヤネ屋ありがとう」など称賛の声があふれている。

 また、「安倍政権に逆らった正義の官僚」として知られる元文科事務次官・前川喜平氏もここにきて「緊急参戦」をして、旧統一教会が名称変更を申請していたのを止めていたのは自分だった、という告白とともに、下村博文衆議院議員が文科大臣だった時、旧統一教会とズブズブだったがゆえに名称変更を認めたと主張。これまた称賛を集めている。

 このような著名人やメディアの動きを受けて、政治も「旧統一教会追放」の姿勢を見せ始めた。内閣改造で旧統一教会との関係が指摘された人物を排除したのだ。ただ、新閣僚のなかに旧統一教会系団体のイベントに参加したり旧統一教会系メディアの取材を受けていた者がいることが判明、萩生田光一党政調会長も関連団体との関係を認めたことで、ネット上では「闇が深すぎる」「両者のズブズブの関係は底無し」など驚かれている。

 このように世間の声が盛り上がるにつれて、「旧統一教会の違法性について徹底的に追及すべし」「捜査機関を介入させるべきだ」などの意見も増えてきている。このままいけば旧統一教会は国から解散命令を受けて、日本から追放されそうな勢いである。

ローカル宗教団体とも親密な関係

 しかし、ある自民党国会議員は「その可能性は低い」と断言をする。この議員は、自分自身は旧統一教会との接点はまったくないとして、このように説明をする。

「宗教法人法で団体を解散させるには、組織ぐるみの不正を立証しなくてはいけないが、今回報道されている旧統一教会がらみの被害にはそこまでの物証はない。にもかかわらず、世論が盛り上がっているからという理由で、これを強引にやってしまうと、組織ぐるみの不正の証拠がなくとも宗教団体を潰せるという前例ができてしまう。これは政府与党としては絶対に避けなくてはいけない。なぜかというと、自民党は数多の宗教団体に支えられている政党だからだ」

 自民党は公明党と連立政権を組んでいることで、支持母体である創価学会信者たちの「集票力」も自分たちの権力維持に取り込んでいる。また、自民党の有力支援団体のひとつである「日本会議」には、新生佛教教団、解脱会、念法眞教、佛所護念会、崇教真光、大和教団などが名を連ねているほか、霊友会、立正佼成会、さらには「怒涛の英語力 みすず学園」で知られる深見東州氏が率いるワールドメイトなども過去、安倍元首相との親密な関係が報道されている。

「自民党がズブズブなのは、そのような全国区のメジャーな宗教団体だけではありません。国会議員や地方議員は、その土地にしかないローカル宗教団体の世話にもなっている。例えば、山口県には“踊る宗教”として知られる天照皇大神宮教という宗教団体があり、これが岸信介を強烈に支援していた。その教祖・北村サヨの孫が現在、自民党議員の北村経夫参議院議員です。このようなローカル色の強い団体のなかには、怪しい霊能力者が率いているようなものもあります」(週刊誌記者)

 つまり、世論の盛り上がりを受けて政治の力で旧統一教会を解散してしまうと、「他の宗教ともズブズブだぞ」という指摘が相次いで、自民党として収拾がつかなくなってしまう恐れがあるのだ。 

「こういう社会のムードなので誰も言いませんが、宗教にのめり込んで一家が崩壊するとか、神様やバチをちらつかせて商売をするなんて問題は、旧統一教会に限っただけの話ではありません。どこの宗教団体とまでは言えませんが、信者に対して仏罰が下ると脅して、献金・集金活動に従事させているようなところもある。一方で自民党としては、選挙になると、そういう熱心な信者がいる宗教団体を“票田”としているので、この問題をあまり深く掘り下げたくない」(前出・自民党国会議員)

自民党内の勢力争い

 確かに、宗教学者の島田裕巳氏も7月17日放送の『ABEMA的ニュースショー』(ABEMA NEWS)内でこのように指摘している。

「統一教会に限らず、色々な団体で高額なお金を出す例はある。私の知り合いで創価学会に一家で8000万円献金したという方もいるので、そういう例はあると思う」

 つまり、高額献金、霊感商法、宗教2世などの問題は、旧統一教会があまりにも悪質なので突出して目立っているだけで、他の宗教団体でも多かれ少なかれ存在している普遍的な問題なのだ。だから、宗教を集票マシーンとして活用している自民党としてはこれ以上、深追いができないというのだ。

 ただ、一方で河野太郎デジタル相が「霊感商法について、きっちり対応できるような検討会を立ち上げたい」と述べるなど、一部の自民党議員からは「膿を出しきれ」という声も上がっているが――。

「国民向けのパフォーマンスと、党内の勢力争いのためです。今叩かれているのは清和会をはじめとした自民党のタカ派。麻生派や岸田派というリベラル色の強い議員には旧統一教会のフロント組織、国際勝共連合はアプローチしませんので、今は思いっきり叩いて自分たちの勢力を強めることができる。そのネタとして取り上げているだけで、本気で霊感商法問題にメスなど入れる気はありませんよ」(前出・自民党国会議員)

 喉元過ぎれば熱さ忘れる。今は大騒ぎをしているが、自民党と宗教のズブズブの関係はこれからも「継続」ということか。

(文=長谷十三)

長谷十三

長谷十三

フリーライター。政治・経済・企業・社会・メディアなど幅広い分野において取材・執筆活動を展開。

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