朝鮮労働党は8日、政治局拡大会議を開き、「最近、党内に潜んでいた偶然分子、異色分子が分派活動により自ら勢力を拡張し、党に挑戦する事件が起きた」「張成沢が行った反党・反革命的宗派行為、反動性が暴露された」などと指摘。張氏をすべての職務から解任し、党から除名すると決定した。
一体、張氏による「反党・反革命的宗派行為」とはどのようなものだったのか?
北朝鮮国内に情報源を持つ消息筋は、次のようにその詳細を明かす。
「発端は、張氏が側近や取り巻きを集めて開いた私的なパーティーでの出来事でした。その席上、酒に酔って勢いづいたのか、参加者が『張成沢同志万歳(マンセー)』を三唱したのです」
北朝鮮では、最高指導者の権威は「唯一にして絶対」とされている。つまり、故・金日成主席、故・金正日総書記、金正恩第一書記の「親子3代」以外の個人に対して万歳を叫ぶなど、とうてい許されることではないのだ。
さらに、事件には続きがあるという。
「『万歳事件』は、北朝鮮の秘密警察である国家安全保衛部の知るところとなりました。保衛部はパーティー出席者の摘発に乗り出したのですが、張氏はこれを自らの権力を行使して抑えにかかった。このことが、重大な『反党行為』とみなされたのです。張氏は現在、自宅で謹慎させられているということです」(同)
この証言で気になるのは、万歳三唱はいかにして保衛部に漏れたのか、という点だ。スパイが潜入していたのかもしれないし、あるいは張氏の政敵によって仕組まれたものである可能性もある。
張氏は故・金正日総書記の実妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)書記の夫であり、金書記と崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長と並ぶ、金正恩第一書記の最大の後ろ盾とされてきた。最近まで党を完全に掌握していると見られてきただけに、北朝鮮の権力構造が一気に流動化する可能性すらある。今後の動向に要注目だ。
(文=李策/ジャーナリスト)