集団的自衛権行使容認議論、消費増税による景気後退で一気に潰れる可能性も?
国家の自衛権は、個人に置き換えると、正当防衛に相当する。正当防衛にも危害の対象が自分だけでなく他人に対しても認められているように、自衛権にも個別的自衛権と集団的自衛権がある。
集団的自衛権は国際法で認められている権利で、自国が直接攻撃されていなくても、自国と密接な関係にある外国への武力攻撃を阻止するために武力を用いることだ。
日本もその例外ではなく、集団的自衛権を持っている。しかし、憲法第9条で許容される自衛権の行使は、「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきで、集団的自衛権の行使はその範囲を超えており、憲法上許されない」というのが、これまでの憲法解釈だ。
この解釈を見直し、集団的自衛権を容認する道筋をつけるため、安倍晋三首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、連休明けにも有識者懇談会の報告書を提出する。
報告書では、自衛隊による国連平和維持活動(PKO)への参加拡大や平和維持軍(PKF)などでの武器使用制限の緩和、「国際紛争」の解釈変更などと合わせて憲法解釈上認められている「自衛のための必要最小限度の実力行使」に集団的自衛権も部分的に含まれるとの見解を打ち出す見通しだ。
安倍首相は、報告書を受け取った後に国家安全保障局で「政府方針」を作成・発表して、与党の自民、公明両党内の調整を加速させる意向だ。両党の了承を取り付けたうえで、夏に憲法解釈の変更を閣議決定し、秋の臨時国会で集団的自衛権の行使を想定した自衛隊法改正案などの関連法案を成立させるというシナリオを描いている。
●大手新聞各紙の反応
実は、与党内の調整は首相の指示で4月初めから自民党の高村正彦副総裁が動き出し、“解釈改憲”に慎重な公明党首脳らと会談している。日米安保条約と在日米軍の合憲性が争われた1959年の砂川事件の最高裁判所判決が日本の存立に必要な自衛の措置を認めたことを根拠に、高村副総裁は「判決の必要最小限の自衛権の範囲には集団的自衛権も含まれるものがある」とし、限定的な行使の容認を認めるよう働きかけている。
これに対し、公明党の山口那津男代表らは「砂川判決は個別的自衛権を認めたものと理解してきた。集団的自衛権の行使容認を視野に入れたものではない」との認識を示し、「個別的自衛権で対応できないか、まず検討すべきだ」と主張、慎重姿勢を崩さず、引き続き協議を続けることになっている。