集団的自衛権行使容認議論、消費増税による景気後退で一気に潰れる可能性も?
この砂川判決を根拠にした「限定容認論」に対して、朝日、毎日、読売、産経の全国紙4紙は、“解釈改憲”賛成派と反対派に二分した。
読売は4月4日付社説『限定容認論で合意形成を図れ』で高村副総裁の提案を支持、「全面容認」を求める産経も4月6日付社説『危うさはらむ限定容認論』で、「公明党の理解を得るための『次善の策』の面が大きい。(略)政治的妥協が必要なことは否定しない」と、条件付きながら支持を表明した。
これらに対して、朝日は4月6日付社説『砂川判決のご都合解釈』で「砂川判決が集団的自衛権を認めているならば、その後に確立されていった内閣の憲法解釈にも反映されて当然なのに、そうはなっていない」と批判、毎日も4月11日付社説『限定容認論のまやかし』で、公明党の主張に同調している。
夏場に向けて、このバトルもさらに白熱しそうだが、朝日・毎日に分が悪いのははっきりしている。それでも、「結論先送り」という逆転劇のチャンスがゼロなわけではない。
●多数の論理で解釈改憲を推進か
一強多弱という政治状況に加え、多弱のうち解釈変更に絶対反対なのは共産党と社民党だけといってもいい。みんなの党と維新の会は限定容認を支持しており、一応、反対の立場の民主党も一枚岩ではないようだ。与党の公明党が慎重でも、多数の論理を貫徹すれば、局面は憲法解釈の変更に流れていくと見るのが自然だろう。
消費税増税前の駆け込みなどの反動が経済指標として現れるのはこれからだが、想定以上の落ち込みになれば、安倍政権への支持率が急落する公算は大きい。支持率を決める最大の要因は、その時々の“経済状況”といっていいからだ。
もし、夏場に支持率急落という状況になれば、公明党は勢いを増すし、自民党内のリベラル派も反旗を翻す可能性が出てくる。今は強気の安倍首相も慎重にならざるを得ない。いずれにせよ、反対派は粘り強く“遠吠え”を続けつつ、他力本願で逆転のチャンスは待つほかないだろう。
民主党政権時代、新聞各紙は一致して“決められない政治”を攻撃、“決められる政治”の実現を期待する国民のムードづくりに大きな役割を果たした。その結果、一強多弱の政治が実現した。しかし、民主主義を政治体制の基本に据える以上、“決められない政治”に陥りがちになるのは当然で、民主主義体制を堅持するには、国民がそれを甘受する気持ちを持ち続けることが不可欠だ。
今、反対派の朝日・毎日は“決められる政治”の実現を求めた過去の主張のしっぺ返しを食らっているともいえる。そのことに気づいても、もはや後の祭りだ。改めて「民主主義とはなんなのか」と問い直すとともに、しっかりした思想軸を持たずに安易に展開した「批判のための批判」を猛省する契機にすべきなのだ。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
●大塚将司(おおつかしょうじ) 作家・経済評論家。著書に『流転の果て‐ニッポン金融盛衰記85→98』上下2巻など