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織田直幸「テレビメディア、再考。」第2回

放送と通信の融合? 津田大介が見た、あるNHK番組の可能性

文=織田直幸
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「どのニュースを取り上げるのかというニュースの選別やニュースの軽重は、今までテレビ局が決めていたんです。ここにマスメディアの大きな機能がありました。この番組にはラディカルなところがあって、そういう価値判断をこちらでやるのではなくて、ネットにおいてアクセスが高いニュースをピックアップしていくというスタンスでやっているんです」。

 津田さんはそう説明する。

 ニュースソースは自分ら自身の取材であり、そのニュースを大きく取り上げるかどうかはテレビ局が決めること。

 これが今までのニュースの常識だったが、この番組はこの常識をさらりと否定している。“常識”という言葉は、“プライド”と言い換えてもいい。そして、現在の多メディア状況を踏まえて客観的に見れば、このプライドのほとんどは時代遅れで歪んでいるものだと思う。
 
テレビの原発報道に関し、津田さんが大問題だと思ったこと

 津田さんから話をお伺いするうち、話は福島第一原発事故のテレビ報道の問題に及んだ。

「福島第一原発事故当時、原子力の専門家はほとんど官邸に呼ばれていて、メディアはほとんど専門家をつかまえることができなかった。だから、誰も何が実際に起きているかわからない状態だったのです。でもテレビは“わかっている”かのように報道しなきゃいけないということになり、そのために、例えば保安院の発表報道をそのまま流したりしていた。先日もそのことを池上彰さんと話しましたが、“わかんない”んだったら“わからない”と言いながら報道すればよかった。そうすると『マスメディアが責任持たないで、わかんないなんて言いながら報道するとはどういうことだ!』などと怒る人もいるけれど、例えば『80%の確度はあるけれど、20%くらいは間違っているかもしれない』という推測も含めた報道するっていう言い方だってあり得たと思う。でも、そんな言い方は、あの時も今もマスメディアは持ってない」

 これもさっきの話と同様、テレビ側が持つプライドの問題だろう。このプライドが何かしらのバイアスをかけ、アウトプットされる情報を歪めてしまった。

 原発事故直後のテレビメディア報道の問題に関して、津田さんはこんなことも指摘した。

「新聞、テレビが今回の原発事故で、最もやっちゃいけないってことをやったと僕が思うのは、メディア側が退避区域を自主規制したことだと思う。例えばTBSは60kmとか朝日は70kmとかいう形で、記者クラブメディアは『原発から☓km以内は取材禁止・立ち入り禁止』とした。個人で取材する記者がいても、デスクがそれをニュースにしないなんていう状況があった。結果、南相馬では記者クラブは全てなくなったりもした。

 あの時の政府の発表報道は、20km以内は立ち入り禁止、20〜30kmは屋内退避で、いちおう30km以上は『大丈夫だ』というのが当時の発表報道だった。しかしマスコミは、もっと被害が出ていることを推測し、記者の安全を守るため、コンプライアンスも含め、その危険区域設定を多めに取っていた。まあ、そこまではいい。けれど、もしそうなら、『政府は30km以上は安全としていますが、我々は独自の取材によってその政府の基準は危ないと判断しているので、念のため自社の記者はその地域には立ち入らせないようにしています』ということを同時に発表すべきだった。もしそうしていれば、新聞の読者やテレビの視聴者は『ああ、このメディアは政府の発表を疑っているんだな』という、わかりやすい国民へのメッセージになっていたはずです。それを言わずに自分たちの基準を作ってしまったのは、信頼を失う大きな間違いだった」

 本当の緊急時に及んで、“素朴な身内保護意識”という馬脚を現したということなのだろう。

織田直幸

織田直幸

株式会社ゼロ社・代表取締役。プロデューサー/編集者

2012年8月、㈱カンゼンから書き下ろし小説、テレビメディアの崩壊と再生を描いたアクション小説『メディア・ディアスポラ』が上梓された

メディア・ディアスポラ

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