世襲候補vs.民主系現職の神崎郡
世界遺産・姫路城で知られる姫路市の北にある3町が舞台となる神崎郡。ここでは前回統一選で落選し、引退した自民元職の地盤を継いだ元福崎町議の二世候補が民主系現職に挑む構図だ。
現職の地盤は選挙区北部の神河町。同町は人口県下最少というだけでなく、各種選挙で高い投票率を誇ることでも知られる。地元関係者は「高い投票率はもともとの母数が少ないだけでなく、各種組織・団体の力が非常に強いからだ」と解説する。そして、それらと良好な関係を築いている人物が山口氏だとしたうえで、「彼にはどのような背景がある組織や団体であっても、臆せず飛び込んで虜にしてしまう魅力や能力がある。地元、相生以上に山口氏にとって強固な地盤ではないかと思います」と話す。
一方で、新人候補の地盤は選挙区南部の福崎町。関係者は「率直に言って現職の壁は非常に厚い。しかし、今回は山口さんも自民党入りした以上は表だって相手の支援には回れないはずで、そこに勝機を見いだすしかない」と打ち明ける。地元記者は「相生や赤穂などと違い、山口氏が『神崎郡では今回何もしない』と明言しているという話は確かにあります。ただそれが、改めて何かする必要すらないからなのか、本当に手を引いていることを意味するのかは不透明です。個人的には前者ではないかと思っています」と話す。
苛立つ自民県連
議会で単なる最大会派ではなく、単独過半数を占めるメリットは議会対策上も首長や役所に対しての発言力上も非常に大きい。ある県連関係者は「万が一、半数を割り込んでしまったら、山口氏に頭を下げないといけなくなる事態も考えられるので、今回は今まで以上に自分たちの力だけで単独過半数を維持しなければならない」と話す。
自民県連の山口アレルギーは山口氏の政治姿勢だけでなく、山口氏の後ろ盾となっている二階氏へのアレルギーでもあるとの指摘がある。
地元記者は「総選挙の際、兵庫12区へ二階氏が介入したことで反発を招きました。それ以前に神戸市長選でも二階氏や彼と通じた元市会議員の分派工作などで引っかき回されたという思いを持っている関係者は多く、それらの事情が相まって、より山口氏の問題が複雑化しているのです」と解説する。
ある県政関係者も「神戸では、元市会議員の影響力が強かった港湾関係の利権に二階氏が噛んでいたという噂は絶えない。また、慢性化する交通渋滞の解消を図るため、県西部の臨海部に新たな自動車専用道を建設する構想が長年進められているが、山口氏を可愛がる背景には、そこにも介入したいという思惑が透けて見える。とにかく二階氏は金の臭いには敏感で、だからこそ政党を渡り歩いてもなお影響力を誇示できているのだろうが、これ以上、兵庫県をかき回すことは我慢できない」と話す。
号泣県議で世界中に恥を晒した兵庫県議会が、自民県連と山口氏が引き起こす場外乱闘でまた、話題を集めてしまうのだろうか。
(文=編集部)