安倍晋三首相側近と目される首相官邸中枢スタッフはこう打ち明ける。
3月27日放送のテレビ番組『報道ステーション』(テレビ朝日系)生放送中に起こった、キャスター古舘伊知郎氏と元経済産業省官僚・古賀氏の激しいやりとりが、今に至るも大きく尾を引いている。
改めて指摘するまでもなく、この1件は「古舘氏vs.古賀氏」という矮小化された見方では、絶対にその本質に迫ることはできない。しかし、「官邸からの圧力」の有無にフォーカスしてみたところで、ピント外れになってしまう。
そもそもテレビ業界の基本的な受け止め方は、「よくもテレビ朝日は、これまで古賀氏を使い続けたものだ。ある意味で驚きであり、皮肉を込めて言えば、その点で『報ステ』は立派」(テレビ局関係者)というもの。これまで古賀氏をコメンテーターなどで起用していたテレビ局は極めて限定的で、ほぼテレビ朝日とTBSのみだった。ここ最近ではそのTBSでも出演期間は少なかった。
その理由は、あまりにも激しい政権批判がテレビ局にも嫌われていたからにほかならない。その点については古賀氏も十分に認識しており、「僕が出られるのはテレビ朝日くらい」と語っていたという。
しかし、そのテレビ朝日ですら国政選挙期間中は古賀氏がレギュラー出演する番組でも起用を見合わせていたのが実情だ。つまり、古賀氏の発言が特定党派を利することになりかねないと判断されたからにほかならない。メディアとしての公正中立という立場を考えると、こうした対応もやむを得ないといえよう。
少なくとも官邸、そして自民党サイドは、冒頭の官邸スタッフのコメントからも明らかなように、古賀氏が特定の政治勢力をバックアップすることを意図してコメントしていると認識しているのだ。
そうした点でいえば、今回の一件の核心は「古賀氏vs.官邸」という政治的な対立構造にある。図らずもそうした“政争”の舞台を提供させられてしまったテレビ朝日としては、いい迷惑だったといえよう。
いずれにしても大多数の視聴者は、古賀氏を「正義」と位置づけたのではあるまいか。もしもそうだとしたら、古賀氏のプロパガンダ(宣伝活動)は大成功といえる。
(文=須田慎一郎/ジャーナリスト)