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これは、医師不足にとどまらない「町興し」につながる可能性もある。成功モデルは筑波大だ。つくば地域の医師不足は緩和され、文京地域として評価は高まった。土地の値段は上がり、東京から鉄道が通じたくらいだ。国立大学の移転は政府ができることで、一考に値する。
できることは、これだけではない。病院経営者や中高年の医師にとって、もっともインセンティブが働くのは、埼玉県や千葉県の診療報酬を高くすることだ。財源に限界があるのであれば、医師が過剰な地域の診療報酬を下げればいい。幸い、日本の診療報酬は全国一律だ。コストが高い首都圏の診療報酬を上げ、コストが安い地方の診療報酬を下げることは理にかなっている。この対策に加え、首都圏の病床規制を緩和すれば、病院や医師は西日本から首都圏に移動するだろう。
ただ、この政策は、日本医師会や彼らが支援する国会議員から猛反発を喰らうだろう。全国一律の診療報酬こそ、彼らの利権だからだ。
医師偏在の問題を、本当に改善したければ、現状を正確に分析し、適切な手段をこうじるべきだ。専門医教育など、若手医師の教育を混同させるべきではない。
どんな病院経営者も、若手医師は喉から手が出るほど欲しい。安い給料で、よく働くからだ。
多くの若手医師は民間人だ。政府が勤務場所や居住地を指定することはできない。今回の厚労省の議論は、医師偏在是正の大義名分のもとに、自らは医療現場に行くことはない厚労官僚が、空理空論を弄んでいるようにしかみえない。医師偏在の問題を、官僚と業界団体に任せてはならない。国民視点で、オープンな議論が必要だ。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)
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